M&Aの仲介形式を法律により規制すべきかについて

2010.12.03

経営・マネジメント

M&Aの仲介形式を法律により規制すべきかについて

清水 美帆
株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

M&Aにおいて、売り手・買い手双方の代理を行う「仲介形式」を利益相反とする意見や法案を作る事に対して、中小企業のM&Aの現場を知る立場から反対意見を述べています。

M&Aアドバイザーの関わり方には、主に「アドバイザリー形式」と「仲介形式」という二つの形式があります。アドバイザリー形式の場合には、売り手と買い手それぞれにM&Aアドバイザーが着任する形となり、売り手と買い手、それぞれの立場で助言を行います。一方、仲介形式の場合には、売り手と買い手で同じM&Aアドバイザーが着任する形となり、売り手、買い手の間に立って、中立的な立場で助言を行います。

一部の学者や役人の方々の意見として、仲介形式は双方代理行為となり、利益相反にあたるといった声があり、昨今、金融庁も同じ立場になって、金融機関に対して指導をし始めています。また仲介形式に関する規制を作るという話もあがってきているそうです。

確かに理論上は、1円でも高く売りたい売り手と、1円でも安く買いたい買い手には利益相反の関係にあたると言えまう。しかし、実際、現場で中小企業同士のM&Aアドバイザーとして関わらせて頂く中で日々感じる事は、中小企業同士のM&Aの場合、結婚と同じく、友好的に行われる事が前提なので、M&Aアドバイザーが間に入って、中立的な立場でアドバイスをしていく仲介形式で行った方が、成約する割合は断然高いと言えます。また、アドバイザリー形式の場合、M&Aアドバイザー同士の相性が悪い場合や、相手側のM&Aアドバイザーが未熟な場合にも、当事者とは関係のない所で、ブレークしてしまうといった事態もありえます。

ここで仲介形式を廃止するという規制を作ってしまえば、他のM&Aアドバイザーを通してお相手を探してもらわなければいけなくなってしまい、これまで以上に手間と時間がかかる事となってしまいます。となると、成約の確立は断然下がる事となり、結果として、M&A成約数の減少にも影響を及ぼす事となるでしょう。

そもそも、お相手あっての事なので、仲介形式かアドバイザリー形式を決めるのはそれからの事ですし、逆にそれを望まないという意思があるのであれば、売り手または買い手がM&Aアドバイザーに対して、その様な要求をすれば良いだけの話です。それを規制として作ってしまう事に対するメリットが誰にあるのかという事に疑問を抱きます。

政府は年間7万社の後継者不在による廃業対策として、M&Aによる事業承継を推進していながら、この様な規制を作ってしまっては、M&Aは増えるどころか減少していく事になってしまいます。何にでも規制を作るのが、本当に日本経済にとって良い事なのかをもっと深く考えるべきだと思います。

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清水 美帆

株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

JMAA認定M&Aアドバイザー(CMA)

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