こんな時代だからこそ、基本に立ち返って考えてみたいことがある。
日本は90年代初頭のバブル崩壊以来の、長きに渡る不況から抜け出すことができぬまま、世界的な経済危機にも巻き込まれた。1993年からの「失われた10年」という言葉は、いつしか「失われた20年」と数を増している。このまま2012年に「20年」が終わる日が来ても、人口減少は既に顕著であり、2015年から始まると予測されている世帯数減少も目前に迫っている。日本は市場縮小国なのだ。GDPが中国に抜かれただけでなく、産業の各分野で国際的な優位性が失われている。そんな今日だからこそ、「マーケティング」の意味を考え直してみたい。
電通グループのマーケティング戦略企画会社である「電通イーマーケティングワン」が11月24日に配信した、同社独自の「CRM意識調査」に関するニュースリリースはある意味、衝撃的だ。
『マーケッターの危機感が浮き彫りに~「自社のマーケティング活動は後れている」56% CRMの領域拡大 現在の顧客だけでなく、新規見込み顧客も含めた顧客リレーション構築へ』
http://www.dem1g.jp/topics/topics_101124.html
ショックなことは2つある。1つは回答企業の過半が自社のマーケティングに対して遅れを自覚していることだ。しかし、それは2つめのショックなことに比べれば些末なことだ。遅れは取り戻せばいいのだから。問題は、企業のマーケターがその<具体的な項目として「見込み顧客の育成・創出」(約61%)、「新規見込み顧客獲得戦略・施策検討」(約59%)など、“新規見込み顧客を対象にしたマーケティング活動”を特に成功していない活動と考えている>(同社リリース)と回答していることだ。
同調査はCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)、つまり、顧客といかに良好な関係を構築・維持・向上させ、永続的な収益を上げていくかという考え方に関した調査である。CRMは、市場の拡大期における新規顧客獲得(acquisition)に偏ったマーケティングへの反省を込めて、顧客の継続促進(retention)の比重を高めて関係性を構築・強化しようという考え方である。それにも関わらず、「新規獲得」が大きなテーマになっているのである。そこからは、マーケターの焦燥感がにじみ出して見える。「モノが売れない時代」であり、不景気の中で、いかに企業として生き残りを図っていくかが試される中、調査結果はタイトル通り「マーケッターの危機感が浮き彫り」になっているのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。