昨年、コンビニエンスストアのローソンがHMVを買収したとして話題になった。 CD小売業界をとりまく厳しい環境下で買収に動いたローソンの意図がわからなかったが、年末の開示を見てある程度理解できた。 持参金付きの売却だったというわけだ。
昨年、コンビニエンスストアのローソンがHMVを買収したとして話題になった。
http://www.lawson.co.jp/company/news/025212/
iTunes storeをはじめとしたダウンロード販売が主流となりつつある音楽小売業界において、店舗販売を中心とするCD小売業はここ数年来縮小を強いられており、HMVも平成22年8月に旗艦店であった渋谷店を閉店したことにもあらわれているように厳しい環境にあることは想像に難しくない。
実際に平成22年4月期の営業利益は763百万円の大赤字であり、大和証券SMBCプリンシパル傘下においてもお手上げだったようだ。
以上のような状況で取得するローソンの意図がよくわからなかったが、昨年末の開示である程度理解できた。
http://www.lawson.co.jp/company/news/030745/
持参金付きの売却だったというわけだ。
これは再生型のM&Aではよく行われる手法で、売り手が売却前に売却対象会社の増資を引き受けたうえで、当該増資金額より少ない金額で買い手に売却する。
増資された金額は売却対象となった会社に残り、そのキャッシュを元手として買い手は対象会社の再生を図るのである。
売り手にとっては全面降参、まさに恥も外聞もない撤退ということになるのであるが、それでもダラダラと出費を続けさせられるよりは遥かにマシという判断であろう。
一方でHMVジャパンには増資金額54億円が残り、ローソンが大和証券SMBCプリンシパル側に支払った18億円を差し引いても36億円のキャッシュを手にしたことになる。
(HMVジャパンに多額の借入金が残っている可能性はあるが、開示資料からは不明)
はたして買い手のローソンは勝者なのだろうか。まだそうとは言いきれないだろう。
HMVを見事に立て直すことがかなった時に初めて勝者といえるのであって、HMVをとりまく環境を考えればそれは容易なことではない。
失敗すれば今度はローソンが必死に撤退をしなければならない道が待っている。
今後のHMVの動向にも要注目だ。
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