私はマーケティングリサーチを専門としていますが、常日頃、リサーチの仕事をしていてつくづく思うことがあります。
それは、必要な情報を効率的に収集することは当然。もっと重要なことは、収集した情報をいかにうまく加工し、価値ある情報に仕立て上げるか、という点です。
つまり、「情報を集め、分析した結果はこの通りです」というレベルで終わるのではだめなのです。さらに踏み込んで、
・分析した結果がどんな深い意味を持ちえるのか
・また、その情報を元にして、今後の戦略展開においては、
どんな意思決定の選択肢があるのか
を示せるのが理想であり、目標とすべきところでしょう。
ボストンコンサルティンググループの北沢真紀夫氏は、「ビジネスパーソンに求められる情報収集力には2段階ある」と述べています。(日経産業新聞2011/01/05)
すなわち、以下の2段階です。
1.目的に合致した情報を集めることができるかどうか
2.集めた情報に付加価値をつけられるかどうか
第1段階では、情報収集の「設計力」が重要ですね。的確な仮説設定、そして仮説検証に必要な情報の見極めが求められます。一方、第2段階では、収集した情報の「解釈力」が必要になってきます。
情報を解釈するというのは、情報から多様な「意味」を抽出することと言えます。そして、どんな意味が抽出できるかは、解釈を行なう人の「脳力」次第です。
ここで「脳力」というちょっと広い表現を使ったのは、以下のような複数の能力が含まれているからです。
・知識の深さ(当該分野について詳細な知識がある)
・知識の広さ(幅広い、異質な分野の知識がある)
・実体験の多さ(情報が生まれる現場を体験している数)
・多様な知識を柔軟に組み合わせる能力
情報を細かく分けていくこと(文字通り「分析」)や、情報を整理・分類する作業はかなりの部分、論理的思考で解決できますし、コンピュータが支援してくれます。分析者が変わったからといって、結果にそれほど大きな差はでません。
しかし、情報の「解釈」はより具体的に言えば以下のようなことなのです。
・データの奥にあるものを透かしてみること
・情報の行間を読むこと
・複数の情報を適切に組み合わせて新たな情報を生み出すこと
ですから、解釈者の「脳力」の高低によって、同じ情報を元にしていても、その情報に与えられた「付加価値の大きさ」が随分違ってくるということになります。
さて、北沢氏は、情報に付加価値をつける力を高めるためには、「思考を深めるための情報を積極的に集めること」と指摘しています。単に目先を流れていく雑多な情報を漠然と捉えるのではなく、「なぜこうなっているのか、他の情報との関係は何か」といった思考を働かせつつ、必要な関連情報を集めていくということでしょう。
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2012.11.30
2016.08.26
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。