昨日は、富士フイルムの技術力をテコとした、ヘルスケアカテゴリーへのブランド拡張を取り上げました。 今日は、別の興味深いブランド拡張事例です。
昨年(2010年)急に市場に出回るようになり注目を浴びたお酒が、韓国のお酒「マッコリ」ですね。見た目はカルピスみたいな感じ。甘くて、軽い酸味のあるマッコリは、ヨーグルトドリンクのようでとても飲みやすい。
従来は店頭でほとんどみかけることがなく、韓国料理店でしか飲めませんでしたよね。今は手軽に買えるようになりましたので、私も時々楽しんでいます。
日経ビジネス(2011.1.3)の記事によれば、マッコリの市場規模はこれまで73万ケース(1ケース=8.4リットル)だったそうです。ところが、2009年12月に眞露ジャパンが、新規に参入したことから、市場規模は一気に2倍に膨らむ見込みです。
眞露(以下、「ジンロ」)と言えば、韓国のお酒メーカーで「焼酎」が思い浮かびますね。今回、マッコリ市場に「新規参入」したと聞いて逆に、「ジンロではマッコリを取り扱ってなかったの?」と驚いた人も多いんじゃないでしょうか?
実際、ジンロは本国韓国でも、マッコリを製造・販売したことはなかったのです。その理由は、韓国では、多くの中小メーカーがマッコリを作っており、競合を避けていたからとのこと。
ところが、日本で「マッコリ」についての消費者のイメージ調査をやってみたら、なぜだか、「ジンロ」の名前が挙がったのだそうです。一般消費者は、それほど韓国のお酒や、メーカーについて詳しい知識がありません。ですから、[ジンロ→韓国→マッコリ]といったイメージ連鎖から、ジンロとマッコリの擬似的な結びつきが形成されていたのでしょう。
ジンロ社としては、このイメージを活かして、これまで製造、販売したことのないマッコリを日本で展開することにしたというわけです。日本のマッコリ市場がまだ小さく、有力なライバルが存在しないということも考慮されたんでしょうね。
ジンロ社はお酒メーカーですから、同じお酒のマッコリへのブランド拡張は、同一カテゴリーの中での横展開です。ですから、元来、成功しやすい取り組みではあるのですが、消費者が持っていた「架空のブランドイメージ」をうまく活用したという点が、大変興味深いというか、珍しい事例だと思います。
なお、マッコリは、韓国では男性労働者のお酒というイメージが強いのだそうです。しかし、日本におけるマッコリのイメージは、韓国のお酒ということ以外は、ほぼ白紙。
そこでジンロでは、乳酸菌が入っていて健康的なイメージ、口当たりもよく、カロリーも低い、アルコール度数も6%程度という特徴が、女性に向いていることから、女性ターゲットのコミュニケーションを展開しています。
このコミュニケーション戦略も、マッコリ市場急拡大のポイントだったと言えそうです。
ジンロWebサイト
http://www.jinro.co.jp/index.html
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2011.02.24
2015.07.10
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。