P&Gから濃縮液体洗剤の新製品「アリエールレボ イオンジェルコート」が発表された。発売は4月上旬。花王の「アタックNeo」、ライオンの「トップNANOX」とガチンコ勝負になる。しかし、その作戦は実は奇策であるといってもいいだろう。
日本における衣料用洗剤のトレンドは、それが用いられる洗濯機の進化と共に近年大きく変貌を遂げた。経済産業省によると、衣料用洗剤のうち液体のシェアは2003年には15%(販売金額ベース)であったが、節水型のドラム式洗濯機の普及で2009年に入って40%へと上昇。そして、2010年1~8月の累計ベースで液体洗剤がついに50%を超えた。その背景には販売数量の伸びによって規模の経済が働き、従来よりも低価格化が進んだことも普及を促進したと思われるが、現在は低価格品による価格競争ではなく機能競争となっている。
主戦場は「濃縮液体洗剤」というカテゴリーだ。濃縮液体洗剤は従来の液体洗剤を高濃度に圧縮し、少量でも抜群の洗浄力を発揮する。繊維に残りにくく、すばやく泡切れするという特徴だ。それにより、従来すすぎを2回していた洗濯のしかたが、1回ですむようになったのである。市場の2強は花王の「アタックNeo」、ライオンの「トップNANOX」だ。前者は日経MJ2009年ヒット商品番付の前頭1枚目に選ばれ、後者はそれを追うように発売され、2010年に同じく前頭1枚目となった。
カテゴリーの先行者である花王の「アタックNeo」は最大限その効用を訴求した。広告のキャッチコピーは「節水・節電・節時間」。すすぎ1回で水と電気の使用量を削減できる。水道代、電気代の低減できるため財布にもやさしいがそれ以上に、すすぎ1回分の10分間という時間が短縮でき家事の負荷軽減が実現することを強調した。「機能的価値」と同時に、主婦の気持ちに訴えかける「情緒的価値」も訴求したのである。
発売時期において後れを取ることになったライオンは、価値訴求の切り口を変えた。同様に「すすぎ1回」を訴求できる商品であったが、それよりも、花王のアタックNeoに勝るとも劣らぬという「洗浄力」を前面に出し、従来の洗剤では落としにくかったニオイの元となる皮脂汚れを繊維の中まで入り込んで落とすという機能的価値を強調した。
大手3社の中では最後発となったP&Gは「アリエールレボ イオンジェルコート」でどう戦うのか。それは、同社のニュースリリースを見るとよくわかる。
<P&G史上初! “食べ物汚れ*をつきにくくする”コンパクト洗剤誕生「アリエールレボ イオンジェルコート」新発売~汚れる前に、洗って防ぐ。今日からはじめよう、「予防洗い」!~> http://tinyurl.com/47j9s67
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。