大ヒットした「桃ラー」の次を狙う商品は多いが、大本命は「食べる焼肉のたれ」ではないか。なぜならそこには、背水の陣ともいうべき背景が透けて見えるのだ。
「桃ラー」こと「辛そうで辛くない少し辛いラー油」も桃屋の増産効果が現れてきたのか、市中のスーパーの棚でも見かけられるようになってきた。そして、「食べる調味料」ブームに乗ろうと「食べる七味」や「食べる醤油の実」など次なるヒットを狙うなか、大本命ともいうべき商品が登場しようとしている。
エバラ食品工業が「黄金の味 具だくさん」。発売は2月21日だという。
<エバラ 「 黄金の味 具だくさん 」 新発売~ 玉ねぎとガーリックの旨味とコク 中辛 ~>(ニュースリリース)
http://www.ebarafoods.com/company/press/2011/01/24/ir/pdf/20110124_gudakusan.pdf
注目すべきはリリースに記されているその用いられ方だ。
<焼いたお肉に乗せて、そのまま召し上がるのはもちろん、千切り野菜と一緒にサンチュなどに包む食べ方もおすすめです>とある。
・・・新しい。新しいが、肉を食べる量が減りそうだ。
リリースを受けて、あるメディアでは<「焼肉の味のほとんどは肉の味じゃなくてたれの味」>であるとして、<焼肉代が節約できますよ! おめでとう!>などと記している。(1月30日live doorニュース)Twitterや掲示板でも「たれで飯三杯!」「もう、肉いらねぇな!」というような声が上がっている。
統計局総合統計データ月報によると、2000年から2009年にかけて、牛肉年間消費量は約30%減っている。「牛肉需給表」に掲載されている2010年3月までの「推定出回り量」を見ても、上下はあるものの右肩下がりが見て取れる。その原因としては、BSE問題が大きな影を落としているといえるだろう。
関東圏では焼肉として家庭で豚肉を焼くこともあるが、全国的には牛肉が一般的だろう。消費者の牛肉離れは、「牛肉のたれ」にとっては死活問題だ。
お好み焼きにかける「お好みソース」の大手、「オタフクソース」は家庭のホットプレートでお好み焼きを美味しく焼く方法を広めるため、全国の小学校などをまわって「お好み教室」を開くことをミッションとする「お好み焼き課」が存在する。本体となる料理が食されなければ、消費が減少してしまうコバンザメ的な存在である調味料の生き残りの知恵である。
「チャ~ハンの素なら・・・」というコマーシャルソングは耳に残っているだろうか。和田アキ子の歌声。永谷園。同社のWebサイトにはチャーハンの素でチャーハンを作るために使うだけでなく、餃子の具に用いるなど、様々なアレンジレシピが掲載されている。家庭でチャーハンが作られる機会を待つだけでなく、その使用機会を増すべく努力を重ねているのだ。
「桃ラー」は家庭の冷蔵庫や調味料棚の片隅でひたすら餃子が食べられるのを待っているという境遇から、「ラー油の自立」を実現した。同様に、エバラは牛肉消費量と共に登場機会が減少する「焼肉のたれ」を肉から解放しようとしているのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。