「ファミレス復活」のキーワードは何だ?

2011.02.14

営業・マーケティング

「ファミレス復活」のキーワードは何だ?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 「衰退が止まらない」といわれたファミリーレストランが復活しはじめているようだ。そのワケは何だろうか?

 「牛丼戦争」というキーワードが人々の口の端にのぼるようになり、餃子の王将と日高屋が勢力を競い合っていた09年頃。「ファミレスの衰退が止まらない」とメディアがこぞって書き立てた。すかいらーく、ロイヤルホスト、デニーズという「ファミレス御三家」の一角である「すかいらーく」が川口新郷店(埼玉県)閉店と同時に、39年間の歴史に幕を降ろしたのも同年10月29日のことである。

 ファミレス衰退のワケは各紙誌や評論家・専門家が様々な分析を行っている。各分析が共通宇して指摘しているのが、「セントラルキッチン方式」という一括大量生産と「FC店舗展開」による大量供給体制だ。本来は規模の経済を効かせるバリューチェーン上の強みが、消費者の嗜好の多様化によって「メニューが凡庸で没個性的」という弱みに転じてしまった。また、本来、ファミリーに向けた「手ごろな価格」での料理の提供を行うはずが、デフレの進行によって相対的に割高になってしまった。対照的に、各店舗に独自メニューの自由度を持たせ、さらにメニューを低価格化した餃子の王将が「デフレの勝ち組」として脚光を浴びたのである。

 では、ファミレスが復活しはじめたワケはナゼだろう。
 2月11日付・日経新聞が「ファミレス 手軽さ再評価」という記事を掲載している。インタビューに応えたある主婦の言葉が象徴的である。曰く「ここ2~3年、外食は焼き肉か回転ずしに絞っていた。比べてみると、ファミレスの方が安上がり」とある。

 記事では人気メニューが紹介されている。すかいらーく亡き後、同グループがローコスト低価格オペレーションで運営する「ガスト」。そこでは、単品830円と同店の客単価より100円高いビーフシチューが好評だという。「家庭で調理しにくいメニューであれば、多少高めの商品でも注文が集まるようになった」とコメントがある。
 旧御三家の1つ、「デニーズ」では、「自宅で作るよりファミレスのほうがカロリーが低く、栄養バランスも取れると考える健康志向の消費者も増えている」とみているという。人気メニューはホワイトチェダーチーズのフォンデュ風ハンバーグ、565キロカロリー・880円、蟹と十八穀のふんわりあんかけドリア、406キロカロリー・850円。

 上記の人気メニューの価格を見ると、単品価格とはいえ800円台と、以前のファミレスの価格からは割安になっている。低価格化が実現できるようにサプライチェーン、自社のバリューチェーン、オペレーションを見直したのだろう。さらに、本来手間のかかる料理を押し出すことによって、セントラルキッチンという本来の強みを復活させた点も大きい。また、凡庸といわれたメニュー企画も、低カロリーメニュー開発に注力した。
 「手ごろな価格で食べられる」という価格面。「自分で作るには手間がかかる料理が食べられる」という時間と手間の節約。「自分では計算して作れないローカロリーメニューが食べられる」というノウハウ。それらはターゲットのKBF(Key Buying Factor=購買理由)であり、それらの組み合わせで、復活のためのポジショニングを消費者に示しているのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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