「探索的調査」は、新製品開発や既存商品の改善などを目的として、消費者の消費実態やニーズを探るために行なう調査。 一方、「検証的調査」は、新商品やリニューアル商品が上市されてから一定期間後、販売状況や実際の購入者層などを把握し、新たな打ち手(施策)を立案するために行なう調査です。
私はマーケティング・リサーチャーとして、「探索的調査」、「検証的調査」のどちらもやらせていただく機会があります。一般的に申し上げて、「探索的調査」は積極的に行なうけれど、「検証的調査」は重要性が低く、予算もあまり割かない企業さんが多いようです。
まあ、「検証的調査」は振り返り作業です。「予習」には力を入れても、「復習」にはあまり熱心になれない気持ちはわかりますが・・・
しかし、「検証的調査」も、実際、とても価値のある業務であることがわかってもらえる事例がありました。(「西川英彦の目」、日経産業新聞、2011/02/10)
ハウスウェルネスフーズが昨年(2010年)5月に発売した新製品、‘C1000 ビタミンレモンコラーゲン’は、美肌を意識する女性の取り込みに成功。「美容リフレッシュ飲料」と呼ばれる新市場を開拓しました。
上記商品は、同社ロングセラー‘C1000 ビタミンレモン’のブランド拡張ですね。同社は、近年販売が微減傾向にあった既存商品‘ビタミンレモン’の状況を打破するため探索的調査を行いました。
その結果、健康飲料市場において、「女性美容」の機能が重視されていることがわかったのです。そして、この機能を発揮できる成分として、「ビタミンC」、そして次に「コラーゲン」があることから、コラーゲンを用いた‘C1000 ビタミンレモンコラーゲン’が開発されたというわけです。
興味深いのは、発売後の「検証的調査」によって、女性だけでなく、美肌を意識する男性層に対しても、同製品に対する一定の需要が生まれていることがわかった点です。
男性も以前と違って、若年層中心に随分とおしゃれになり、「見た目」を気にするようになってきています。また、中年男性でも、年を取ると肌のかさつきが気になりだし、ほってはおけない気持ちになるとういうのは、私自身が実感しています(笑)
さて、検証的調査によって、ビタミンコラーゲンが男性にもよく売れていることがわかったわけですが、購入される理由は、実は容器の「色」にあったのです。従来のコラーゲン飲料の容器は、赤やピンク主体の色合いにしてあり、明らかに女性だけを意識したものでした。
赤やピンクの飲料は、人に見られるのがちょっと恥ずかしくて男性は買いにくいもの。しかし、ビタミンコラーゲンは、薄い緑色をしています。ですから、ビタミンコラーゲンなら男性も‘恥ずかしくなく’購入できる。これが男性にも売れている理由だったのです。
ひょっとしたら、「薄い緑」という寒色系の容器にしたことで、主対象の女性層には、ビタミンコラーゲンが多少とも敬遠されている可能性もあるかも知れません。でも、そもそも好調に売れ続けているわけですから、容器の色はたいした障害にはなっていないことが明らかです。
そして、検証的調査をしっかりやることによって、今後、男性層も視野に入れた製品を開発するなら、赤やピンクといった暖色ではなく、寒色系を採用することが有効という知見が得られたことは大きい。
企業の皆さん、ぜひ「探索的調査」だけでなく、「検証的調査」にも力を入れてくださいね!
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。