眼鏡店JINS(ジンズ)を展開するジェイアイエヌが、3月からサングラス専門店「スペクトル・ジンズ」を展開するという。
2月11日付・日経MJの記事には「サングラス専門店 丈夫さ・機能前面に ジェイアイエヌ、600種類用意」とある。同社は「機能的でおしゃれなオリジナルめがねが常時1200種類以上、眼鏡は全てレンズセットで4990円〜」というウリの眼鏡店JINS(ジンズ)を展開する。テレビではメガネ萌えにはたまらない、メガネをかけるとピカイチであるベッキーを起用したり、やたらと身軽な外国人男性が宙返りやでんぐり返しをしたりというCMを展開する競合の「眼鏡市場」が目に付くが、JINZも目元も涼しく、爽やかな顔をして栗山千明、オダギリジョーが「私は軽い女です」「私は軽い男です」とわずか10グラムの軽量眼鏡訴求し、全面対決している。その同社が仕掛けた次の一手が「サングラス専門店」だ。
記事によれば、店舗(Place)は「5年後に数十店舗規模」というからかなり力を入れてくることがわかる。「価格は3,990~9,990円と、メガネと同様に手の届きやすい水準に設定」とある。特徴は価格(Price)はだけではない。商品(Product)も「サングラスのレンズには、ヘリコプターの防弾生を持つ窓などに使われる高性能素材」を使ったという。一体、どこにかけて出かけるのだろう・・・。と一瞬思ったが、「UVカットの液体を塗り込み、“目を守る”という機能を前面に打ち出す」という。つまり、極端な素材はポジショニング(Positioning)を明確にするためであるようだ。広告(Promotion)としてはCMでもその丈夫さ、「目の保護」を訴えかける派手な演出が予想される。まさか、サングラスを撃つとか・・・?
そんなポジショニングとマーケティングミックス(4P)で狙う(Targeting)のは、もちろん、「視力の悪い人向けに度付きのサングラスも用意する」とあるが、「眼鏡をかけない20~30代の若者の需要を掘り起こす」とあるように、そちらがメインだ。
この「サングラス専門店」という展開の眼目は、そのターゲティングにある。
あなたが靴の営業マンだったとしよう。海外勤務を命じられ、任地に到着した。目の前には密林。商売の相手は未開の原住民。靴など履いていない。さて、本社へどんな第一報を送るだろうか。「ダメです。誰一人として靴など必要としていません!」か、「ビッグチャンスです!靴を売る相手があふれています!」か。
靴を履いている人=顕在需要を持っている人に商品を売るのは誰にでもできる。ジェイアイエヌがやろうとしていることは、靴を履いていない人=顕在需要がない人に、需要喚起をして売ろうということだ。
密林に裸足で住む人々に、何と言って靴を売ればいいだろう。彼らは靴などなくても不自由しない丈夫な足の裏を持っている。しかし、万が一、足を怪我すれば生死に関わることもある。そのための「足の保護」を訴えかけるだろう。サングラスも同じだ。黒い瞳を持つ日本人は、瞳の色が薄い白色人種と比べ、紫外線に無頓着である。その弊害と瞳を守る必要性を、極端な製品の素材や(恐らく)派手な広告、手軽な価格で訴求し、需要を喚起するのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。