電子書籍元年と叫ばれた割には手元に届かない電子書籍。「Kindleのない生活は考えられない」という世界はいつになったら訪れるのだろうか。
電子書籍元年と叫ばれて久しいが、私の周囲を見渡しても、タブレット型端末をPC代わりに使っている人はいるが「電子書籍」を「読んで」いる人を見かけることはほとんどない。
ハーバード・ビジネススクール教授のヤンミ・ムン氏が著書の中で言っているような、「Kindleのない生活は考えられない」という世界はいつになったら訪れるのだろう。まるで、何十年も先の話のようだ。
現実にアマゾンは、「電子書籍事業が好調で、この四半期に第3世代Kindleが数百万台売れ、Kindle向け電子書籍の売り上げが、初めてペーパーバックの売り上げを超えた」と発表した。
昨年7月に、Kindle向け電子書籍はハードカバー書籍の売り上げを超えたらしいが、今回のペーパーバック超えは、予想を上回るペースだともいう。
USの売り上げの中で、書籍がどの程度の割合かは明らかにされていないので推測にすぎないが、メディア部門も第三四半期は14%増だったこと、Kindle本体の売り上げ、世界での売り上げ比率や日本アマゾンでの書籍売り上げ、などから考えれば、隠れ電子書籍普王国と呼ぶ人もいる日本のグラビアやコミック類が中心のガラケー向けコンテンツ(これを電子書籍と呼んでいいのかどうかもあやしいが)をはるかにしのぐ数字であることは間違いないだろう。
一方日本の出版業界は、相変わらず不景気な話題ばかりだ。
出版科学研究所の発表によると、書籍・雑誌の平成22年の推定販売額が、3.1%(608億円)減の1兆8748億円となるという。書籍が前年比3.3%減の8213億円、雑誌は同3.0%減の1兆535億円だった。
また象徴的なのが、電子書籍に関するコメントだ。「将来的には電子書籍の売り上げを統計に加えていくことも考えている」と、アマゾンの画期的な発表とは違い、いかにものんびりとした雰囲気だ。
日本でも、最近ではあるが、端末に関しては百花繚乱ばりに様々なデバイスが登場し、新聞が読める、雑誌が読める、本が読めると連呼し、そして必ずと言っていいほど、「どこと組んだ」とか「何々を配下に」といった形で、マーケット、流通までカバーしている。
そして、「変わる」と言われ続けながら、実際の一般ユーザーにおいては叫ばれているほどの変化はない。何がアメリカと違うのだろうか。
アマゾンのジェフ・ベゾスは、かつて「PCや携帯電話、PDAのようなネットワークツールが普及することで、情報の断片的な収集(情報のつまみぐい)に慣れてしまい、長時間集中して本を読まなくなってきている」といった主旨のことを語ったという。また、「Kindleによって、そうしたことからの脱却を図りたい」とも述べていたという。
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