関西私鉄大手・南海電鉄が葬祭事業に力を入れる。確かに葬祭ビジネスはこの先有望、潜在ターゲットは間違いなく増える。では、南海の新事業は成功するのだろうか。
数少ない成長ビジネス
年間売上高約9000億円。経済産業省が実施する特定サービス産業実態調査(平成17年度)から類推すれば、現時点での葬儀業の売上は、おそらく1兆円を突破しているはずだ。注目すべきは前回調査と比べての伸び率で、3年前に行われた調査から約14%の伸びとなっている。
年間平均で5%、これはかなりな伸び率といえるのではないか。仮にこの成長率を維持するなら14年ぐらいで市場規模は倍になる計算だ。そしてターゲットが、この先確実に増えていくことを考えれば、伸び率はさらにふくらむ可能性もあるだろう。
競争は熾烈に
縮み行く日本市場で、わずかに残された成長市場が見過ごされるはずもなく、競争は厳しくなっている。前掲の調査によれば、トータルの事業所数は3年間で減っている。資本金別に見ていくと、減っているのが3000万円以下の組織だ。中小が淘汰され、資本力のあるところが伸びていることがうかがえる。市場ライフサイクルの教科書に書いてある通りの流れとなっているわけだ。
他にも調査結果を細かく見ていくと、いろいろおもしろいことがわかるのだが、ここでは一点だけ。葬儀1件あたりの売上高である。都道府県別のデータが出ているが、全国平均が125万円となっている。そこで質問、一件あたりの葬儀代が、全国で一番高いのはどの県かおわかりになるだろうか。
先に全国最低を明かせば島根県の67万円である。なぜかわからないが、ダントツに低い。なるほど日本海沿岸の方は質素なのかとと思いきや、トップは同じ日本海沿岸の富山県である。1件あたり174万円もする。島根の倍以上である。このあたりには県民性や地方文化の影響が強く出ているのだろう。仮に、これから葬祭業に新規参入する場合は、商圏の習慣や文化をきっちり分析する必要があるわけだ。
※
このあたりのデータに興味を持たれた方は、次のサイトにアクセスされるといろんなデータが手に入ります。
→ http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-102341.php
私鉄と葬祭業
さて本題。関西の私鉄大手、南海電鉄が葬祭ビジネスに本格参入するという。目の付けどころは悪くない。計画では「11年度中に大阪府の南部を中心に(葬儀会館を)3ヵ所新設する予定。会館1ヵ所の商圏を半径3~5キロメートルに設定しており、自社の沿線では20ヵ所まで解説する余地があるとみている(日経産業新聞2011年1月17日付17面)」そうだ。
次のページカギは顧客接点に
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24