「お散歩感覚“10分間の身だしなみ”」がキャッチフレーズの1000円理容室、「QBハウス」がJR東日本と組んで、親子連れを狙った新店舗の展開をはじめた。その戦略を読み解こう。
5月10日付日経新聞に「家族連れ向けの理容店 キュービーネット」という記事が掲載された。キュービーネットはQBハウスの運営会社である。記事によれば、「店名はIKKA(イッカ)“で、1号店をJR東日本系の駅ビル“イーサイト籠原”(埼玉県熊谷市)に開いた」とある。店名も違えば、店舗内の設計も従来のQBハウスの店舗とは全く異なるようだ。「小さな子どもが親と一緒にカットを受けられるように座席の間に間仕切りを設け、レンガ風の壁面など内装も一新する」とある。変わらないのは「料金はQBハウスと同様に一律1000円に設定。洗髪や顔ぞりのサービスは省く」というところだ。
ちょっと考えれば、「親子」というセットを狙えばオイシイことはわかる。「売上=客数×客単価」だからだ。特にQBハウスの場合客単価が1000円に固定されているが故に、客数をいかに増すかが売上アップのキモである。親子なら一度に二人。2倍だ。狙いは「親が子どもを連れてくる」というパターンだけではない。「子どもが親を連れてくる」というパターンも考えられる。特に小学校入学前ぐらいの子どもは、母親が家庭でカットしているケースも多い。それが「1000円ぽっきり」だとすれば、「お父さん連れてってちょうだい!」と省力化を図ろうとすることも大いに考えられる。父親は他の店でカットしていたかもしれないが、子どもがきっかけで利用するようになるのだ。
「客数」に関係する変数は「来店頻度」である。
「親子」の場合、父親の来店頻度向上にも寄与する。QBハウスの来店客を観察してみると、2つの種類に大別されると思われる。「お散歩感覚」のキャッチフレーズどおり、こまめにカットに通うタイプと、かなり髪が伸びるまで放置しておいてバッサリ切るタイプだ。一方、子どもは「髪の毛伸び放題」という風情はあまりいないだろう。小学生ともなれば、「衛生検査」で「前髪が長すぎ!」とか怒られてしまう。(←最近はそんなのない?)故に、こまめに手入れをする。子どものカットのタイミングに合わせて父親もカットするようになり、来店頻度が向上するのだ。
「客数」に関係するもう1つの変数が「リピート率」である。
働きに出ている父親は、仕事の空き時間や通勤の帰りなどにカットをする機会がある。昨今ではQBハウス系列店だけでなく、「1000円カット」の競合も乱立傾向にある。そんな環境の中で、「子どもと一緒」にカットするのか習慣化すれば、他店にスイッチする可能性を低減できる。高リピート率な優良顧客化できるのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。