2月の終わりに長浜キヤノンさんの改革活動の発表会に参加させていただく機会をいただきました。拙著「調達モノを買う仕事」でも取り上げていますので、ご存知な方も多いとは思います。 2005年からスタートしたこの活動は現在は第10ステージに入り益々大きな成果を上げています。
長浜キヤノンと取引先、外部のコンサルタント、三者のプロジェクトによる緊張と協調のバランスの維持、6つのステップによる現場改善の推進と改善状況の見える化、取引先の営業だけでなく現場やマネジメントを巻き込んだ活動と若手バイヤーがその調達の現場を変える活動を主導。
このような改革活動の特徴が上げられますが、今回数社の取引先の発表ではリードタイム、在庫削減、品質改善、売上機会の向上などで、二桁以上の大きな効果が継続して出ています。
このような活動自体、非常に素晴らしいものですが私が今回特に関心したのは以下の三点です。
1継続
2進化
3言葉の力
1.継続は正に継続力です。2005年からスタートし既に5年が経過、6年目に活動が入っています。当然、プロジェクトに参加する取引先は変わってきているとのことですが、それにしてもこのような活動を5年も続けていること自体尊敬に値します。
2.進化。以前私が長浜キヤノンさんからお話をうかがってから活動は進化していることを感じました。一番の進化は改善のためのツールが整備されたことです。これはゴール・システム・コンサルティングのTOCの方法論です。TOCの方法論を活用することで特に第4ステップの「コア問題を解決する」につなげていることが進化につながっていることを感じました。
3.言葉の力。以前私がメルマガでGEとトヨタの比較をし、そこでも取り上げましたが、良い企業のカルチャーの一つは「共通言語」であるということです。GEで言うと6シグマの方法論やワークアウトなど、
全世界で通じる共通言語や手法がそれです。
トヨタの場合は言うまでもなく数々の共通言語を持っています。
カイゼン、自働化、棚入れ、見える化などなどです。
今回の改革活動でも多くの共通言語を聞きました。
「三他のこころ」からの脱却「もうけ続ける為の仕組み」「生産的まさつ」等々。また素晴らしいのはこれらの「共通言語」がバイヤー企業だけではなく取引先各社まで共有されていることです。
これは単に言葉を共通する以上の意味があります。
当日ある取引先の常務執行役員の方から長浜キヤノンさんのこの取組に対して感謝の言葉がありました。非常に感銘を受けました。
この取引先さんは新工場立上げの際にトラブルが続き、品質向上のために「プロジェクトをやりませんか」という長浜キヤノンさんのキーマンの言葉でプロジェクトをスタートし「このプロジェクトでどん底から這い上がれました。
感謝の気持ちでいっぱいです」というスピーチをされていました。
素晴らしいことです。単に購買・営業の関係で御座なりに改革を進めるのではなく、取引先が本当の意味で自社の改革を進めているのです。
それもバイヤー企業が一方的サプライヤ企業を指導するというような形ではなく。
本当の「新しいサプライヤマネジメントの形」がここにはあると考えます。
このような取組は震災時にも効果があります。別の機会にこのキーマンから伺った言葉が印象に残っています。
「有事発生時にも日頃から良い関係性作りができているバイヤーには情報収集力があることが分かった」
正に震災に負けない信頼関係作りができているということです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。