スターバックスと言えば、CSの高さやリピーターや愛用顧客が多いことが有名です。なぜスターバックスがファンを獲得して支持されるのかを、サービスサイエンスを活用して考えることで、CS向上やリピーター獲得のポイントを抽出してみたいと思います。
前々回からの記事“CS向上に効く「事前期待のマネジメント」" “CS向上のコツ「どの事前期待に応えるか」"で、顧客満足の向上は「事前期待」を把握することから始まるということをお話しさせて頂きましたが、今回は「ではどうやって把握した事前期待に応えるのか?」のヒントになるのではないかと思います。高いCSやリピーターを獲得するために「何に努力するべきか」を、スターバックスのサービス事例を基にサービスサイエンスの視点から考えてみたいと思います。
スターバックスのサービス説明は他の記事や関連書籍に譲らせて頂きたいのですが、スターバックスと言えば、質の高いサービスの代表例ではないかと思います。入店と同時に聞こえる印象の良い挨拶。注文の際の共感性のある親しみあるコミュニケーション。素早く正確なコーヒーの提供。混雑時などの状況に応じた柔軟な席案内。ゆっくり寛げる安心感ある空間と雰囲気。何度行っても満足して、また行きたくなるという方も多いのではないでしょうか。このような高いCSの評価を得てリピータを獲得することができるサービスは、どのように生み出されているのでしょうか?
■実は、スターバックスにはマニュアルが無いんです。
その代わりにあるのが、「グリーンエプロンブック」と呼ばれる、サービスのビジョンを共有する為のものです。そこには次の5項目が挙げられています。
・歓迎する ・心を込めて ・豊富な知識を蓄える ・思いやりを持つ ・参加する
実にシンプルな言葉で、スターバックスとしてのサービスのビジョンを共有しているんですね。更にはこのビジョンを実現するために柔軟な対応ができるよう、各店舗に多くの権限を預けています。
「マニュアル」ではなく、「ビジョン共有と権限移譲」でサービス品質を高めている。これをサービスサイエンスの視点から見てみるとCS向上についての重要なヒントが浮かび上がります。先に結論を申し上げますと、(マニュアルが悪いというわけではなくて)「サービスコンセプトに合ったCS向上の努力の方向」というものがあるということなのです。
■CS向上の努力の方向
先ず、CS向上の努力の方向については、大きく2つあります。それは「失点をなくす努力」と「得点を増やす努力」の2つです。
「失点をなくす努力」とは、お客様を怒らせないことを重視したもので、マニュアルの活用やマナー教育がその代表例に当たります。この種の努力はこれまで多くの企業でも実施されてきたのではないでしょうか。しかし今の時代、この「失点をなくす努力」だけでは、高いCSを獲得してリピーターを獲得することが難しくなってきました。そこで注目されているのが「得点を増やす努力」です。これは、お客様の期待に応えたり、思いもよらないサービスを提供して大満足や感動をして頂くというものです。そしてこれを実現するために必要な施策のひとつが「ビジョン共有と権限移譲」による柔軟なサービスの提供になります。これを行うことで、前回の記事“CS向上のコツ「どの事前期待に応えるか」"でいうところの「個別的事前期待」「状況で変化する事前期待」「潜在的事前期待」に応えて高い評価を得ることが可能になるのです。
サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
2012.04.03
2012.03.13
2012.03.03
2011.09.22
2011.09.21
2011.06.12
2011.04.29
2011.04.23
2016.06.13
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新