ある購買課長の挑戦(中編)

2011.10.03

経営・マネジメント

ある購買課長の挑戦(中編)

野町 直弘
調達購買コンサルタント

「当社はこのプロジェクトXでリードタイムが15日から8日に短縮され約50%削減できました。在庫は20%以上削減できました。結果的に保管庫のスペースも10%削減でき、トータルでXX億円の定量的な効果を出すことができました。」

「当社は滞留在庫が500万円あったものがプロジェクトXの結果50万円に削減しました。またリードタイムも当初の7日から4日に大幅に短縮することができました。」

「我が社はリードタイムが20日から14日に短縮しました。また客先納期遵守率が100%となり、優秀サプライヤとして大手取引先4社様から年間表彰を受けました。」

「弊社はプロジェクトの生産改善により不良率の大幅な改善を実現し、約30%の在庫削減を行い前年比50%の増益を果たしました。」
前回ご紹介したプロジェクトXが画期的であるポイントは5つほど上げられます。
その中でも一番大きなポイントは『大きな効果』がでていることです。
ここに上げたのは発表会でプレゼンされたプロジェクトの成果の一例にすぎません。リードタイム短縮、滞留在庫削減、不良率低減、納期遵守率の向上、生産変動に対するフレキシビリティの向上、これらの効果が、数%の世界ではなく、ディジット(数十%)単位で実現されていることに驚きを隠せません。まずはこの成果の大きさがこのプロジェクトが画期的である理由の一つと言えるのです。

それでは何故、このような大きな効果が出ているのでしょうか。
私がプロジェクトXの実務推進者である藤元課長に尋ねたところ、このような答えが返ってきました。

「それは大きな成果が出るまで継続して改革を進めるからです。このプロジェクトをスタートして5年になりますが、未だにゴールは見えていません。様々な現場改革を進めてトライアンドエラーを繰返し、昨日よりも今日、今日よりも明日、より生産性を高めようと我々も取引先の現場担当の皆様も懸命に努力を続けているからです。簡単に言えば効果が出るまで、いや出ていてもそれに甘んじることなく、継続的に徹底的に愚直に改革し続けることがこのプロジェクトXの特徴なのです。
当り前なのですが、上手くいくまで、成果が出るまで、やり続けるから絶対にいつかは大きな効果がでるのです。」

なるほど、その通りだなと思う。しかし、その一方でこのような「購買が取り組む継続的で徹底的で愚直な現場改善」が続けられること自体がこのプロジェクトの画期的なポイントの2つ目ということがわかるのです。

サプライヤ育成、工程改善。言葉では言うものの購買部が主導してそのような現場改善活動がどこまでできるものでしょうか。通常購買部は現場や技術には弱い事務系人間です。結局はサプライヤに提案依頼を行い、サプライヤに現場改善の提案をしてもらっているだけではないのか。
購買担当者は日々このようなジレンマを感じながら仕事をしています。
しかしプロジェクトXの2つ目の特徴は購買部が現場に入り込んで継続的な現場改革を続けていることなのです。またそれによって大きな効果を出している。このような取組みは他社には殆ど見られません。豊川自動車がグループ会社向けの現場改善活動を支援していくことが非常に有名ですが、これはあくまでも生産室という生産改善専門チームが行っていることですし、目的や取組み方もプロジェクトXとはやや異なります。購買部がこのように生産現場にまで入り込んで現場改革を主導している活動は非常に珍しいのです。
このように購買部が主体となった継続的かつ徹底的な現場改善活動は非常に難しく、また他に類を見ない取組みと言えるのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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