映画館のスクリーン数が減っているという。(11月29日付日本経済新聞)スクリーン数はシネコンの台頭により増加を続けていたが、18年ぶりに減少に転じたという。原因は、スクリーン数5未満の一般の映画館の閉館が進む一方、シネコンの出店好立地がなくなってきたためだという。
では、映画館というビジネスのどこに問題があるのだろうか。4P的に考えてみよう。
・ Product:メガヒット作はないものの邦画人気も高まり大きな問題とは考えられない
・Place:記事にあるように旧来の映画館の淘汰は顧客利便性の観点から考えて致し方ない。しかし、シネコンは映画の流通チャネルとして理想的だ。好立地が減ってるいという問題は否めないかもしれないが、集客という意味においてシネコンは映画館ビジネスの問題を劇的に改善させた。
・ Promotion:テレビやOOH(屋外広告)連動など、プロモーション手法は高度化し集客に貢献していると思われる。
となると、残りひとつのP、Priceの問題が考えられる。しかし、一般1,800円。割引によっては1,000円。この価格妥当性を論じるよりも、映画館としての「売り上げ」や「利益」を考えた方が問題は見えてくるように思う。
問題の根本はスクリーン数を増やし続けるだけでなく、「稼働率」を向上させることにあるはずだ。新作の封切り直後や土曜日曜など以外の映画館のシートは、恐ろしいほど空席が目立つ。航空会社にたとえるなら、こんな状態で飛行機を飛ばしたら赤字間違いなしである。稼働率向上によって、映画館というハコの売り上げ・利益を改善することが先決だろう。
「売上=客数×客単価×リピート率」なので、客単価が割引はあっても上限1,800円に固定化されているため、客数を増やすしかない。しかし、上映時間が決まっている以上、一日の客数にも上限がある。とすれば、上映一回あたりの空席率をいかに低減するかがキモとなるはずだ。
発想としては、飛行機と同じ。早割同様に前売りで割引が実施されているが、そこをもっと精緻にやっていく余地はあるだろう。LCC(低価格航空会社)は早いほど席は安く、直前ほど高くなるという細かな料金設定をしている。大雑把な料金や割引制度を見直しすぐにでも検討した方がいい。
さらに考えを進めると、そもそも、企業が顧客から収益を上げられるポイントは限られている。そこを確実に押さえるのだ。何らかのきっかけ(ライフステージ)で取引が発生したら、
1.アップセリング(買増・買換)
映画なら、すぐに前売り券を買わせる程度だけしかやっていないのが現状だ。それも予告編との連動が弱い。前述の「早割」と併わせて早期に買わせる。確実に次のチケットを買わせる工夫が必要。現状の“置いてあるだけ”は論外である。
2.クロスセリング(関連商品の販売)
映画関連グッズ販売は、アニメや特撮ヒーローものぐらいしか力を入れてやっていないのではないか。メーカーはお金を払ってまでプロダクトプレイスメント(劇中商品PR)をやりたがっているのだから、「劇中で使っていた商品の即売」など、もっと積極的な関連商品の販売(お取り寄せでもいい)で収益を上げるべきではないか。ディズニーリゾートの収益は物販で上がっているという事実から学べるだろう。
3.アフターマーケティング(囲い込み)
現在行われているのはポイントの付与ぐらい。ポイントと併せて複数回分の鑑賞券を事前購入させるSuica的前払いカードの導入も検討してもいいだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。