とうとうフェイスブックが待望の上場申請。申請書の『マーク・ザッカーバーグからの手紙』の中で語られる「社会変革」への熱い想いと、彼らの企業文化である「ザ・ハッカー・ウェイ」の重要性。
フェイスブックが待望の上場申請を行いました。ウェブ上に公開された申請書類にさらりと目を通してみましたが、なかでも特に印象に残ったのが、若き創設者であり最高経営責任者であるマーク・ザッカーバーグからの手紙です。
世界中の人々がつながり、自己を自由に表現しあうことを可能にするツールを提供することによって、「社会を変える」。この実に大胆ともとれる声明文から、生活者、そしてフェイスブックのコラボレーター(デベロッパーや広告主)にとって、史上最強のソーシャル・プラットフォームを構築するのだという彼の意気込みを感じ取ることができました。
もう一歩踏み込んでいえば、人と人との間の「SHARE(共有)」ということが、今日の社会を支える中核的な価値創造活動になる中で、フェイスブックの目指すところ(ザッカーバーグは「ソーシャル・ミッション」という言葉を繰り返し使っている)が明確に打ち出されていたと思います。
また、もうひとつ私の注意をひいたのは、申請書の中で、ザッカーバーグがフェイスブックの企業文化についてかなりの熱を込めて語っているということです。「ザ・ハッカー・ウェイ」と呼ばれるフェイスブックのカルチャーが今後の成功のカギであり、その一方で、「スピーディな実践」を重んじ、「短期的利益に目を向けない」という価値観が仇になる可能性もあると「リスク要因」のセクションで述べているところが、非常に興味深いと思いました。
『企業文化はどのような戦略にも勝る』というのは、一説によればかのピーター・ドラッカーの言葉だとも言われていて、アメリカではかなり以前からよく引用されるフレーズですが、「企業組織として、どんな文化をつくるのか」、「どのようなミッションを掲げるのか」、そして、「働く人たちと、どのような価値観を共有していくのか」ということが、今日、経営上の大きな命題としてとらえられているのだということをザッカーバーグの手紙から感じました。
この若き会社、フェイスブックが、これからどのように世の中を変えていくのか、ひとりの生活者としての期待とビジネスの研究者としての好奇心に胸を躍らせています。
・・・ところで、数値好きな方々のためにあえて付記しておくと、フェイスブックの時価総額は1,000億ドルにも及ぶのではないかと言われていて、資金調達額(ターゲット)は50億ドル。これが実現すると、2004年に行われたグーグルの株式公開時の調達額(16億7,000万ドル)を大きく上回り、史上最大のIPOとして歴史に名を残すことになります。売上に対する評価額が高すぎるのでは・・・という声もありますが、今年第二四半期に予定されている同社の株式公開が米インターネット業界にとって十分すぎるほどの景気づけにつながることはほぼ間違いありません。
成功要因
2013.02.01
2012.02.02
2020.02.17
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。