2月11日付日経MJによれば、「カフェ市場」がさらに激戦化するらしい。そのトリガーを引くのはドトールだ。いかなる戦略なのか、考察を交えて記事内容を見てみよう。
タイトルは「ドトール、大形化で攻勢 新店舗半数、面積2倍 女性向け店舗も拡充」とある。「1店当たり収益増へ」という目的によるものだ。飲食業を構成する要素はQSCAに分解される。Quality=味の品質、Service=接客サービス、Cleanliness=清潔感、Atmosphere=雰囲気である。今回、ドトールは「A」を向上させる。「ゆったり過ごせるソファ席を増やすほか、観葉植物やガラス張りの壁などを設け、広く感じられるような工夫を施す」と記事にある。と、すると、ドトールの高級版、スタバの対抗馬たる「エクセルシオールカフェ」とポジショニングが被ってくるが、その点はエクセルシオールを順次ドトールに転換していくということだ。
ドトールといえば、狭小店にオジサン達が肩を寄せ合ってギュウギュウ詰めになり、タバコを吹かしているというイメージを持つ人が多いが、現在では完全禁煙の店も多くそうした店の来店客は7割が女性であるという。完全なる戦略転換が行われているのである。
ドトールの狙いは、「バリューライン」で考えるとわかりやすい。
フルサービスのカフェを「高価格で高品質」な「プレミアム戦略」とすると、エクセルシオールが戦っていたスタバは、「高級コーヒーなのに、中価格」の「高価値戦略」という価値で顧客支持を集めていた。
一方、「低価格だけどそれなりの価値」である「エコノミー戦略」は以前のマクドナルドに代表される。それに対し、ドトールは「低価格なのに、そこそこの品質」である「グッドバリュー戦略」。
エクセルシオールもドトールもバリューラインを超えていたが、スタバやマクドなどを一気に引き離すため、「低価格だけど価値が高い」という「スーパーバリュー戦略」に出たのだと考えられる。
ポイントは客数×客単価×回転数=売上という基本の基に立ち返って新戦略を実行することだろう。
「ゆったり店舗」にしても、商品単価を上げすに、アドオンセリング(コーヒー+スイーツ、またはフード)によって客単価を上げることだ。商品単価を上げてしまっては、ドトールの看板でエクセルシオールの中身になるだけで、それでは「高価値戦略」のままで価格優位性が出ない。
もう一つは、回転率を下すぎないこと。「ゆったり」だと、回転率は落ちる。しかし、元々のドトールは客の滞在時間が短く高回転型だ。既存客層の離反を防ぎ、その高回転な雰囲気は残しておくことが大事だ。間違ってもコンセントなんかテーブルに付けてはダメだ。なのだから。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。