アサヒはどう変身するのか?

2012.02.15

経営・マネジメント

アサヒはどう変身するのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 2月14日付日本経済新聞に「アサヒ、食品事業を強化」というタイトルの記事が掲載された。「酒類頼み脱却」「フリーズドライなどグループで生産拡大」とサブタイトルにある。ビールの一大帝国はどのような変貌を遂げようとしているのか?

 アサヒグループの11年12月期の連結売上高は1兆4627億円。そのうち国内酒類事業が6割以上を占めるというから、まだまだ主力事業であることに変わりはない。だが、列車内の交通広告を見ても、コンビニやスーパーの商品棚を見ても賑わっているのは低アルコールやノンアルコール飲料ばかり。ビールは右肩下がりなのだ。若者を中心とした「ビール離れ」や健康志向などによる低・ノンアルコール人気に対応しようとすればするほど、主力のビールが圧迫されるという自縄自縛。

 いやいや、1兆4千億を超える売上がそう簡単に瓦解するはずはないと考える向きは多いだろう。しかし、諸行無常。例えばコダック社。2010年に3年連続の最終赤字を計上し、2011年には資金繰りの懸念から株価が急落、1ドルを下回った。そして2012年に連邦破産法11条の適用を申請するに至った。2000年には約1兆700億円(約140億ドル)だった同社の売上高は2010年には3,600億円と減少した。
 2000年に約1兆4,400億とほぼ同水準の売上高だった富士フィルムと成否を分けたのは何だったのか。富士フィルムはデジタル化の波に対応し、さらに事務機や高機能材料、医療などの幅広い事業を擁する精密化学メーカーに転身したのだ。

 PPM(ポートフォリオマネジメント)で考えれば、アサヒグループの「金のなる木」はビール、加えて発泡酒、第3のビールといったビール系飲料だろう。そして、「問題児」から「花形」に育っているのが、低・ノンアルコール飲料だ。諸行無常の世の変化と消費者の嗜好の変化に対応するためには、花形であるビール系飲料がまだキャッシュを産んでいるうちに、「問題児」を生み出して利益を注入し、次世代の「花形」へと育てあげることが欠かせない。アサヒの「食品事業強化」というニュースからは、グループの大胆なポートフォリオ組み替えの試行が見て取れる。「総合食品・飲料グループ」への変身だ。記事には「13年以降もM&Aも視野に、清涼飲料事業と平行して拡大する方針だ」とある。あと数年でもしかすると、ポートフォリオはすっかり組変わっているかもしれない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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