メーカー毎に区切られたブース。専属の美容部員によるオススメと試用。それを快適と考える人もいるが、なかなか敷居の高さを感じたり買い回りがでないことに不便を感じたりする人も多い百貨店の化粧品売り場。それが今、姿を変えようとしている。
2012年3月7日付日経MJに、「そごう柏店 高齢者向け化粧品売り場 陳列、肌の悩み別に」という記事が掲載された。ポイントは「20平米の売り場で25ブランドを扱い、そごう・西武の社員3人が接客をする。商品はブランドごとではなく、“しわ”“たるみ”など肌悩み別に編集し陳列する」という点だ。また、「アンチエイジング化粧品のほか、美容機器やサプリメントも扱う」という。
高齢者向けばかりではない。若年層向けの売り場にも新たな動きがある。
2012年3月6日付SankeiBizに、「三越伊勢丹が化粧品専門店 駅ビルで女性客取り込む」という記事が掲載された。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/120306/bsd1203061751010-n1.htm
「高級化粧品専門店“イセタン ミラー”の1号店を東京・新宿の“ルミネ新宿2”にオープンした」という、本来競合となる駅ビル内に百貨店が出店するということ自体も業態変革として大きなニュースだが、今回はその売り場構成に注目だ。
「売り場面積は約160平方メートルと小型だが“ランコム”“エスティローダー”など約20のブランドをそろえる。スタッフは“イセタン ミラー”の専属なので、客はアドバイスを聞きながらいろいろなブランドを試すことができるのが特徴」だという。
一般にマーケティングで最も認知度のある概念は「4P」ではないだろうか。エドモンド・ジェローム・マッカーシーが1960年に提唱した有名な分類方法だ。Product(製品)、 Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)である。しかし、それは「売り手視点の発想ではないか」という考えの元に、「4C」がロバート・ローターボ-ンによって、1993年に提唱された。各々を、顧客ソリューション(Customer Solution)、顧客コスト(Customer Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)に置き換えたのである。
上記のそごうと伊勢丹の新展開は、4Cで考えるとわかりやすい。
・顧客ソリューション(Customer Solution)
そごうはProduct(製品)中心に考えるのではなく、顧客の抱えた「お悩み解決」を実現するための売り場として展開している。また、伊勢丹はブランド毎に分かれていてそれぞれを試すのが面倒という百貨店特有のハードルの高さを解決する手法として、ブランドの垣根を壊したのである。
・顧客コスト(Customer Cost)
商品を購入するときに顧客は商品の価格(Price)だけでなく、自らの「時間」も消費している。両店ともブランド別の売り場をやめることによって、顧客の時間効率を最大化することに成功している。
・利便性(Convenience)
両店の化粧品売り場は、前述の通りPlace(流通)の垣根を壊し、ブランドのブースという概念をなくしている。売り手の流通の仕組みよりも顧客の利便性を最優先した結果だ。
・コミュニケーション(Communication)
両店の売り場ではブランドが発信するイメージなどの広告・プロモーションよりも、百貨店社員による各ブランドを横断して顧客に合った商品を提供するためのコンサルティングやアドバイスというコミュニケーションが購入のカギとなっている。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。