米国のドラッグストアは、ナゼ手巻きずしを売るのか?

2012.03.15

営業・マーケティング

米国のドラッグストアは、ナゼ手巻きずしを売るのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

薬事法の規制緩和によって大手流通が参入し、激動期を迎えているドラッグストア。国内中堅企業の新規施策と米国の事例から生き残りの方策を考えてみたい。

 3月9日付日経MJ。総合小売り欄のコラム「ハッスル店長」に 中堅ドラッグストアの「トモズ」の新施策が紹介されていた。同社は青果や総菜を含めた食品を充実させた「青トモズ」を新業態としてスタートさせた。記事によれば「客単価は約1000円と住宅地店舗の半分以下だが、オフィス街の客が頻繁に足を運ぶ」とあり、「売上は計画の3割増しで好調」と手応えを感じているようだ。しかし、「今後の課題は収益の向上」とある。
 同店の戦略は調剤薬局を併設し、処方箋の受付をすること。「食品で呼び込んだ客を利益率の高い調剤の利用に結びつけることは容易ではない」とある。

 ナゼ、相乗効果が出ないのか。それは、顧客のニーズ、購買行動に合っていないからではないのか。

 記事にある「水天宮前店(東京・中央)」の立地はオフィスと住宅の境界エリアだ。そのため、「2カ所ある入り口のうち、地下鉄の駅に面した入り口には通勤客向けの地下鉄の駅に面した入り口には小容量のチョコレートやカップ入りスープを、もう一方の入り口には大容量の詰め合わせを置くなど気を配る」とある。
 客は2種類いるのだ。地元客。おそらくは地域的にいって高齢者中心だろう。だとすると、近隣の「病院から処方せんを受け取って調剤受けて帰宅」という動線が発生する。そこで調剤の合間に「ついで買い」を促進できる。だが、もう一方の通勤客はどうだろうか。会社員が病院に行くときは、会社を休んで自宅の近所の病院にかかるか、業務中や休み時間にダッシュで会社近くの病院にかかるという状況だろう。その場合、調剤はできるだけ短時間で済ませて欲しい。「ついで買い」をしている心の余裕はあまりないだろう。
 実際には会社員の場合、忙しくて病院には行けず、ドラッグストアのセルフ販売もしくはOTC(対面販売)の薬で間に合わせることになることが多いのが実情だ。だとすれば、調剤室の利用はない。

 「利益率を上げる」ということが目的なら、米国の面白い事例が3月12日付の日経MJ、「米国発」というコラムに掲載されていた。タイトルは「ドラッグ店の新旗艦店 出来たて、すし実演販売」。米国に約8,000店を展開する大手の「ウォルグリーン」がオープンキッチンで作る「sushi」、高級ワイン、予約制ネイルサロンなどを販売したり併設した店をシカゴにオープンしたという。客の反応は「ヘルシーな出来たてのすしが手軽に買えると、近隣のビジネスマンに好評」「高額商品の動きが良く、売上は予想をはるかに上回っている」という。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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