「チン」して試して、買った後・・・ルクエの場合

2012.03.16

営業・マーケティング

「チン」して試して、買った後・・・ルクエの場合

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 3月16日付日本経済新聞消費欄コラム「消費の現場」。「お試し調理、好きな具“チン”」というタイトル。スペイン発のレンジでチンする調理器具「ルクエ」を使ってランチの具材を実際に調理して食べるカフェが東京・渋谷にオープンしたというが、その狙いはどこにあるのだろう。

 記事によればカフェでの試し方は以下のような手順だ。
 「冷凍生パスタが入ったルクエのスチームケースが席に運ばれる。そこにペペロンチーノ、カルボナーラなどのソースをかけ、野菜や肉類など20種以上ある具材から好みのものを選んで入れるだけ。電子レンジで6分待てば、できあがり」だという。

 消費者の態度変容モデルはAIDMA(Attention:注意→Interest:興味→Desire:欲求→Memory:記憶→Action:購買)がよく知られているが、「ルクエ」のアンテナショップであるカフェの戦略はAMTULで考えるとよくわかる。
 「ルクエ」のA=Awareness(認知)は、進んでいる。家電量販店などの販路でも売っているからだ。非常に簡単という評判も高くネットなどにも使用感を伝えるBlogなども多い。M=Memory(記憶)までは自然と形成される。最大の難所は、消費者が「本当に美味しくできるのかしら?」と思う点だ。やはり試さないと判らないという人も多いだろう。そこで、このアンテナショップが効果を発揮する。T=Trial(試用)をさせるのだ。
 記事には「食後に購入する人も少なくない」とある。納得して購入していくのである。試用の山を乗り切れば、購入した「ルクエ」を使って日々料理するというU=Usage(日常使用)が実現し、やがてL=Loyal(優良客化)して他のタイプの調理器も買うという反復購入が実現する。

 従来のAMTULによる説明なら以上で終わりだが、記事にはない2つのネットとの接触ポイントが隠されているように思われる。
 まず、A→Mと進む過程で、気になる商品は昨今、確実にネットで調べる。つまり、S=Search(検索)だ。そして、Loyal化した後は、自分のBlogやSNSに体験記や調理法、レシピなどを書くだろう。つまり、Share(情報共有)だ。
ネットが促進する消費者の態度変容モデルは電通が考案した「AISAS(Attention→Interest→Search→Action→Share)」があるが、「試用」がキモの場合は「AMTUL+2S」もしくは「ASMTULS(←発音できないが)」という流れが考えられるだろう。

 「イノベーション普及論」を記したE.M.ロジャースもイノベーションが普及するための6つの要素の中に「試行可能性」=本格的な購入・導入の前に「お試し」ができることの重要性を挙げている。それに加え、2つのSを用いた態度変容モデルの活用は今後ますます増えてくることだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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