世界のインターネット利用者数は急増しており、情報の収集、発信メディアとしてなくてはならない存在となったが、そんな自由なインターネットの世界もさまざまな検閲がかかるようになってきた。
総務省の調査によると、日本のインターネット利用者数は平成22年末に9,462万人、人口普及率では78.2 %と、国民の10人に8人近くの人がインターネットを使っていることになる。パソコンと携帯電話の両方を使う人もいるだろうから、実際の利用者数はこれほどではないにしても、もはやインターネットはなによりも最大の情報の収集、発信メディアとなっている。しかし利用者数が増えるにつれて、そんな自由なインターネットの世界もさまざまな検閲がかかるようになってきた。
インターネット検閲についてよくいわれるのは中国である。“サイバー・ポリス”が中国インターネット・ユーザーのオンライン活動を監視していて反体制派を逮捕する、または政府の好まない情報を発信するWebサイトを閉鎖する、といったものだ。これをアメリカ政府などは言論の自由を侮辱するものだと非難してきた。
またソーシャルネットワークが後押ししたアラブの春では、インターネットアクセスを遮断したエジプトを非難したオバマ大統領だが、アメリカや日本政府は、いま同じようにこのインターネットの自由を検閲・規制する方向へ動いている。
検閲ということでよく知られているのがGoogle がアメリカ国家安全保障局(NSA)に協力して諜報活動を行っていることだ。アメリカではこれまでもテロとの戦いを理由にFBIが盗聴や個人情報収集に関して違法行為を行ってきたが、インフラとなったインターネットもその対象になったのである。
そしてもうひとつが、日本政府が昨年署名した「偽造品の取引の防止に関する協定(Anti-Counterfeiting Trade Agreement:以下 ACTA)」である。模倣品や海賊版を取り締まる協定のようだが、これは広範囲にわたる力を外国の政府や版権所有者に与える国際条約であり、テレビや新聞は、日本政府がこのような条約を推進してきたことも、その詳しい内容も、そして昨年10月には署名もしてしまったことも、私の知る限り報じなかった。私がACTAについて知ったのはアメリカの友人からの電子メールであったし、情報はすべてインターネットで集めた。
昨年から、ちょうどTPP:環太平洋戦略的経済連携協定が話題にのぼっており、TPPについても大手メディア、財界はこぞって後押しをしていたが、同じようにインターネットでははやくからその問題が指摘されていた協定である。
TPPも協定の内容は秘密だがACTAも秘密だらけの条約である。ACTAの詳細はTPP同様明らかにされていなくて、もともとWikileaksで素案がリークされたくらいである。内容も秘密にして日本政府が署名するくらいだから、内容が国民に不利益なものであることは明らかだ。もしそれが国民にメリットのある内容なら隠す必要などないはずなのだ。
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2008.09.26
2010.04.20
トッテン ビル
株式会社アシスト 代表取締役会長
1969年、米国の大手ソフトウェア会社の一社員として市場調査のために初来日し、1972年、パッケージ・ソフトウェア販売会社アシストを設立、代表取締役に就任。2006年、日本に帰化し日本国籍取得。2012年、代表取締役会長に就任。