3月19日付日経MJに「駅売店でTDR入場券 東京メトロ 1000円安い平日用」という記事が掲載された。手軽に買えてお得なチケット。ファンにとっては朗報だが、その施策の背後にはキレイなマーケティングの整合性が隠されていると考えられる。
記事によれば、これまでも改札外の定期券売り場でTDR(東京ディズニーリゾート)の入場券を販売していたというが、それがエキナカに登場したというわけだ。3月20日から6月末までの期間限定施策である。
ターゲットは誰か。当然、通勤・通学客だ。そのターゲットに向けて平日限定1000円引きのチケットという商品(Product)を売る。TDRに行く人は通常は休日を予定日にして事前に計画を立て、チケットも用意しておくであろう。それを、「平日に行ってみよう!」と思わせるように背中を押す最大の武器が、価格(Price)と販路(Place)なのだ。1000円引きというお得感は、衝動的にTDRにいってみたくなる。そして、それが目の前のエキナカ売店ですぐに買えるのだ。もう、アメやチョコ、新聞・雑誌を買っている場合ではない。
TDRが割引してまでチケットを売る意図は、稼働の平準化であることは間違いない。平日に休みを取ってランドやシーに行ったことがある人なら判るだろうが、結構な勢いでガラガラだ。どんな乗り物も待ち時間少なく、スイスイ乗れる。ショーだって長時間場所取りをせずにバッチリいい所で観られる。一度平日に行くとクセになる。
だが、「平日にディズニーに行くって・・・」と心理的な障壁は意外と高い。それが、毎日利用する駅売店に「ディズニー割引チケット有ります」的な掲示をされていれば、刷り込み効果を発揮する。地味だが確実な販促(Promotion)であるといえるだろう。
「よし、行っちゃおう!」と思った所で、平日に休んで一人でTDRに行くほど寂しいことはない。よほどのマニアでなければ。必ず、友人を誘うはずだ。そして、めでたく友人を巻き込むことに成功したとしても、一つハードルが残る。チケットの確保だ。通常、言い出しっぺが立て替え払いをして買うだろうが、価格的にまとめ買いは負担が大きい。そんな時、地下鉄の駅売店なら、「各自購入して当日集合!」ということもできるのだ。
TDRは紛れもなく「夢の王国」だ。ランドもシーも。では、駅売店はどんな存在となるのだろうか(ポジショニング)。前述の通り、なかなかハードルの高い平日のTDRを身近にするという存在だ。「夢の国の入り口は、意外な所にあるんだよ」というのが訴求したいコンセプトであろう。
良いマーケティングプランにはターゲティング→ポジショニング→4P(Product・Price・Place・Promotion)の一連の整合性がある。今回の駅売店販売でのチケット販売も、新たな販路(Place)が加わっただけとみればそれまでだ。だが、そこには前述の通り緻密な整合性が仕込まれているのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。