讃岐うどんの「はなまるうどん」が奇策を展開する準備をしている。なんと、他社発行の有効期限切れ割引券・金券を持ってくれば、300円以上の飲食代金から一律50円を割り引くというのだ。
3月23日付日本経済新聞消費欄の記事によれば、新施策は4月2日から開始される。
はなまるうどんの見出した商機は、即時の消費者調査がヒントになったようだ。同調査では、「消費者の約4割が期限切れの割引券などを持っていると答えたと」と記事にある。対象となるのは、「割引券の他に商品券のほか、乗車券や株主優待券なども受け付ける」という。
この施策の効果はどのような所にあるのか。まず、消費者心理から考えてみよう。
せっかく手に入れた割引券や金券。しかし、ふと気がつくと期限切れになっている。何とも残念な気持ちいっぱいになる。そんな時、「それ、うちで使えますよ!」とはなまるが手をさしのべるのだ。「はなまるって、いいヤツじゃん!」というパーセプションを獲得することができる。それは、自社の既顧客ばかりではない。今まではなまると接点のなかった潜在客、「丸亀製麺」など同業他社を利用していた競合顧客を引き込むことができるようになるのだ。
「市場資産の負債化」という。競合や他社が割引券や金券で自社の顧客、または見込み客としたターゲット層を、自社では割引券の製作や配布のコストを全くかけずに取り込む。つまり、競合や他社は結果的にはなまるのためにコストをかけて自社の割引券や金券を発行したことになるのだ。
はなまるの調査結果のように、一定の割合で期限切れは発生する。発行元の企業は一度期限を切ったからには、券を受け入れることはできない。その時点で、それがそのまま、はなまるの商機となるのである。先行企業が積み重ねた「市場資産=顧客・見込み客の数」という優位性を無効化するというという戦略なのである。
筆者ははなまるの施策には第2幕があるように思えている。「期限切れの券」という枠を取り払い、期限内であっても、どこの券でも持ってくれば50円引きという展開で、一層他社の「市場資産=顧客資産」を積極的に、自社はコストをかけずに取り込むという展開だ。市場には各種の券が満ちあふれている。それらを全て自社のビジネスチャンスにするのである。
他社チケットで割引。通常では考えられない逆転の発想が厳しい競争環境においては求められるのである。常識にとらわれず、自社の攻めどころを考える姿勢をはなまるうどんから学びたい。
(参考:「逆転の競争戦略」生産性出版・山田英夫 著)
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。