今日は、某広告代理店さんとの会話から、「マーケティング施策の目的と効果」に関して。特にウェブにどっぷりと浸かっている人に向けて。
“あのTVCMの成果だってよ、うははははは。
成果ですか、まいったな、編集長さまは!”
そう言って乾いた笑いを発したのは、ある広告代理店の人。
4~5年ほど前だったでしょうか。マス広告に強く、デジタル広告も手がける広告代理店さんの忘年会に伺ったときのことです。
「あのスゴいTVCMを手がけた男ですよ、こいつは」とクリエイターさんを紹介されたときに、私が「なるほど、して、その効果はどうだったんですか?」と聞いたことに対する反応でした。
まだ若かった私は「やっぱりマス広告の人たちは成果とか気にしてないんだな」と思って話題を変えましたが、後になって、そのやりとりを思い出しては恥ずかしくなったものです。
というのも、その反応を私は「成果とか、そんなに意識してなかったから、そこを指摘されると厳しい」という意味だと思ったのですが、おそらく彼らは「直接の売上みたいな成果を目的にやる案件じゃないよ、そんな近視眼的な話をされても困る」という反応だったのだろうな、と。
当時はWeb担当者Forumを立ち上げたころで、リスティング広告やSEOに夢中になっていた私の意識はやはり「費用対効果」というところにありました。しかし、企業のマーケティング活動は最後の刈り取り部分だけ見ていてもまわりません。制作にも枠にも大々的に予算をかけて継続的にマス広告を出していくような業種では、なおさらです。
件のクリエイター氏の手がけた案件は、おそらくもっと手前の、市場を作ったり、知ってもらったり、好感度を高めたりといったことが目的だったのでしょう。そりゃ、テレビCMですからね。
もちろんテレビCMでも成果を何らかの形で測ることはできます。視聴率はもちろん、分単位のアクセス解析により、CMの放送が企業サイトへのアクセスにどの程度影響を与えたかは調べられますし、実店舗での販売にも動きが出ることでしょう。
でも、世の中の多くの人の態度変容を「成果」として細かくとるのは、不可能だとは言いませんが、アクセス解析ほどの回転速度でPDCAをまわして行うべきものだとは言えません。
そうした態度変容を期待されるぐらいの案件を任されている人に「で、成果は?」なんて聞けば、そりゃバカにされても仕方ないでしょう。
同様のことは、ウェブでも起きています。
ネットでのマーケティング活動というと、すぐに刈り取り系の費用対効果の話題になることが多いものです。もちろん昔からあるジャンルの商材ならば刈り取り命の部分も否定できませんが、新しいジャンルの商材ならば市場創製や認知を目的に行う施策は必要です。また、大量のデータをもとに子細に調べなければ見えてこないビュースルーによる認知効果もあります。さまざまな技術的制約から本当のユーザー行動が見えなくなってしまう部分もあります。
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2015.07.10
2015.07.24
安田 英久
株式会社インプレスビジネスメディア Web担当者Forum編集長
企業のウェブサイト活用やウェブマーケティングに関するメディア「Web担当者Forum」(http://web-tan.forum.impressrd.jp/)を運営しています。