子供用シューズとして大人気の「瞬足」に大人用が登場した。確かに子供用があれば、大人用もアリだが、そのありそうでなかった商品の真のターゲットは誰なのだろうか。
オトナとしては、どうせランニングシューズ買うならナイキとかアディダスとかカッコイイブランドの物が欲しい。もしくは、走りに徹するならショップで足を三次元計測してくれてピッタリのものを選んでくれるアシックスも捨てがたい。・・・というより、ランニングブームのイマドキ、シューズの一足や二足は誰でも持っている。走らない筆者の靴箱にもアシックスが眠っているぐらいだ。
そう考えると、子どもに大ヒットし、「強大なリーダーブランド」となった瞬足も、オトナにターゲットを拡大した瞬間に国内外のビッグブランドに挑む「無謀なチャレンジャー」となってしまうように思える。
初の大人用「瞬足」が発売(fashionsnap.comより)
http://www.fashionsnap.com/news/2012-03-29/shunsoku-otona/
上記の記事を昨夜Facebookで紹介したところ、即座に「いいね!」を押した人が多数いた。その人はどんな人で、どんなニーズを持っているのだろうか。
フツーにシューズのランニングシューズのターゲットを考えれば、ランニング初心者・中級者・上級者というレベルに色柄の好みを考えて、男性・女性、若者・中高年というようなセグメント条件を掛け合わせて導き出すのだろう。
しかし、駿足のターゲットは属性セグメントから導出はしていない。それは「子供の前で、勝ちを掴み取りたい!」という親の究極の「ニーズ対応型」のターゲティングである。
商品としては、<「瞬足」は、小学校のトラックが「左回り」である事に着目し、左右非対称のソール形状を採用した><「左右非対称ソールでコーナーを駆け抜ける」というコンセプト>という特徴をそのままに、<校庭・園庭など狭いグランドを想定して、大人の体重やスピードに対応する機能を搭載>したという点が今回のウリだ(記事より)。「これなら父兄リレーで勝てるかも!」と運動会でいいとこ見せたい親心に訴えかける、ニクイまでのKBF(購買理由)の提示のしかたである。
確かに父兄リレーは運動会の華であるが、本気でその競技に出場して走る人ばかりではない。しかし、幼稚園・保育園の運動会なら必ず何らかの競技に親は駆り出されて走ることになる。その時、「○○ちゃんのお父さん、お母さんはもう買ったって!きっと速いよ!」という強力なDMU(Decision Making Unit=購買決定関与者)である子どもが機能して親の背中を押すのである。
そんな短時間の競技のために、ランニングシューズをもう一足新調するのは・・・という人もいよう。しかし、「子どもとお揃い」という抗いがたい魅力がそこにはある。何と言っても、子どもがお揃いを喜んでくれる時期など短い。それが強力なKBFとなるのだ。
「ターゲットは属性から考えるのではなく、ニーズから考えよ」が、鉄則だ。消費が高度化した今日、性・年齢・職業などのセグメント条件からは共通したニーズを導き出すことは難しい。むしろ、ターゲットを見誤る原因だ。例えば、「運動会」というシーン。そこにはどんなニーズが眠っているか。そこを深掘りして、潜在ニーズを顕在化させ、そのニーズの持ち主の属性を明らかにする。そうした、「ニーズ発のターゲティング」こそがヒットにつながるのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。