「指示待ち」社員は誰のせい?

2007.11.09

組織・人材

「指示待ち」社員は誰のせい?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

若者を自らを比較して憂うことは、古くは平安の書物からも読み取れるという。 ビジネスの世界で言えば「近頃の若い社員は」ということになるのか。 その中で「最近の若い社員は”指示待ち”が多くて」という声がよく聞こえる。 それは誰のせいなのだろうか。

「指示待ち」と言われる態度は、逆に考えれば、指示に対する適切な業務遂行力と解釈もできるが、その何が問題なのか。
世の管理職が嘆く「指示待ち」とは、プログラミングのように事細かな指示をしないと主体的な動きをしないことを指しているようだ。
転じて、若い世代の自立性・自律性のなさを嘆き、「自分が若い頃は」と、若い頃の型破りな活躍を自慢する人もいる。
本当に若い世代はそんなに自立性・自律性がないのだろうか。

筆者はバブル入社世代だ。入社時には蝶よ花よで迎えられたが、多くはバブル崩壊後の苛烈な処遇が待っていた。耐えられずに離職した者も多い。そして事ある毎に「バブル組は・・・」と言われた。
しかし、入社時の景気は本人の与り知るところではないし、その後の育成は自助努力も大事であるが、上司・企業に負うところが大きい。
好景気を反映し、大量に採用された世代に対し、「現場優先」がまかり通る活況なビジネスの中、十分な教育がなされたのか。
同様の懸念が昨今の新入社員への教育でも感じられる。

教育の問題だけではない。
今日のビジネスは、CSRだのコンプライアンスだの、禁則事項が多い。
ベテラン社員にとっても「昨日のOKは今日のNG」という環境にとまどうことが多いはずだ。Do & Dont'sが日々移ろう。
そんな中、上司から部下へ明確な指示が出せているのであろうか。
自立性・自律性は繰り返し明確なDo & Dont'sを徹底された後に励行できるもの。それなくしていきなり動き出されたら、どんなトラブルが待っているかわからない。

「会社の方針をきちんと理解していれば、自ら動けるだろう」と言う声も聞こえる。
だが、会社の方針。つまり、大きな全体方針を咀嚼し、理解て行動に移せる能力が末端の社員に備わっているべき能力だと思ったら大間違いだ。
それができるなら、中間管理職の存在意義は何なのか。

「スルーパス現象」というものが見て取れる。
今日の変化の激しいビジネス環境の中、経営層から発せられる方針を、ミドルが十分咀嚼できず、ワンタッチもせずに下に落とし込む姿だ。
経営方針に準じた”粒度”の大きい話では現場は動けない。
故に、部下は理解できるレベルの指示を待つ。上司はそれを「指示待ち」と評価する。
何とも可哀相な話ではないだろうか。

ミドルの役割の一つは、とにかく部下が理解し、行動できるように、様々な会社の方針やビジネス環境を細かく分解して、必要に応じた構造化をして理解させる。理解させたら行動を促す。動けないなら原因を探し阻害要因を排除するということだ。
「指示待ち」を批判することは即ち、自らの業務不履行を公言しているようなものである。
そうは言っても、人材として問題のある部下もいるという意見もあるだろう。しかし、自らを採用してくれた会社の採用基準を疑うより先に、自分の部下指導が十分であるのかを疑うことも必要ではないだろうか。
自らの若い頃を誇ることより、数段難しくなっているビジネス環境で頑張る若い世代を応援し、さらにその世代を批判することなく使いこなせる、上司としての今の自分を誇れるようになりたいものである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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