不特定多数のユーザーが接続するインターネットでは個人情報の管理に細心の注意を払うべきだが、それでも必ずプライバシーが守られるとは思わないほうがいい。
先日、検索サイト「グーグル」でプライバシーを侵害する予測検索結果が表示され名誉を傷つけられたとして、ある男性がアメリカのグーグル社に表示の差し止めを求める仮処分申請を行った。
その機能は、検索単語を入力すると関連性の高い別の単語が表示されるもので、その男性は数年前から犯罪行為に関与したとする中傷記事がインターネット上に掲載されるとともに、検索サイトに男性の名前を入力すると、犯罪行為が関連検索候補として表示されるようになったという。これによって退職に追い込まれたというのが男性の主張だ。
このため検索サイトであるグーグルに表示の差し止めを求め、東京地方裁判所は男性の申請を認めるとしたが、驚くことにグーグル社は、アメリカではこの機能は違法ではないし、単語の併記はプライバシー侵害にはあたらないとして、表示は止めないと主張しているという。
インターネットにプライバシーはないというと、「自分は悪いことをしていないから、別に問題はない」という人がいるが、この男性のケースをどう思うだろうか。たとえ身に覚えのないことであっても、悪意のある人によって偽りの情報を掲載されるとそれがあっという間に広がるのがインターネットの世界ではないか。自分は匿名のまま、悪意をもって誰かを陥れようとすればそれは可能なのである。
さらに驚くべきことは、「アメリカで違法でないから日本でもやってよいのだ」というグーグル社の対応である。ここは日本であり、日本の裁判所が認めたのであればそれに従うべきであると私は思う。(TPPやACTAのひどいところはまさにこれであり、国の法律よりも国際法によって企業や投資家の利益が優先されるというものだが、この話はまた別の機会にしたい)
グーグル社は以前からアメリカ政府に情報を提供していることで知られている。テロとの戦争から始まった(実際はそれ以前から諜報行為を行っていたが)アメリカ政府の国家安全保障という名の下で行うスパイ行為はまた、大きなビジネスであり、グーグルは政府から要求されたユーザの情報開示について、一人あたりの情報開示に25ドルの手数料を請求しているという(ヤフーは29ドル、マイクロソフトは無償で応じているとのこと)。アメリカ政府はグーグルのビッグユーザだ。
グーグルはこれ以外にも、CIAなどと共に、未来を予測する分析システムを提供する 『Recorded Future』という新興企業に投資している。これはリアルタイムにWebサイト、ブログ、ツイッターアカウントなどを監視し、人間関係、組織、行動や出来事の関係などをあきらかにしてそのユーザーに将来起こりそうなことを予測するというものだ。グーグルにとってデータは価値ある商品であり、その商品が誰の手に渡り、どのように使われるかは問題ではないのだろう。
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2008.09.26
2010.04.20
トッテン ビル
株式会社アシスト 代表取締役会長
1969年、米国の大手ソフトウェア会社の一社員として市場調査のために初来日し、1972年、パッケージ・ソフトウェア販売会社アシストを設立、代表取締役に就任。2006年、日本に帰化し日本国籍取得。2012年、代表取締役会長に就任。