4月8日付日経MJ記事。「メガネフレーム5割軽く」。「素材にチタンより軽いベータチタンを使い、ネジの必要な接続部もなくすことで、重さを4~6グラム程度に抑制」とある。商品写真を見ると、蝶番のネジがない。オーストリアのメーカー、シルエット社の高級フレームにも似たデザインのメガネフレームは、レンズ込みで14800円というお値打ち価格。
・・・と、ここまでの話、どこのメガネチェーン店の話かと思うが「ビックカメラ」の話なのだ。
え?と思うかもしれないが、ビックカメラにはメガネを扱っている店舗が19店舗ある。畑違いの商品を販売する狙いは記事にある。「(メガネの)洗浄や形状の調整といったアフターサービスを無料で実施するなど購入店の来店動機を増やすことで、レンズのくもり止めや花粉防止グラスといった関連商品や他の売り場の販売増を狙う」。
正直なところ、メガネ関連商品のアフターマーケティング(くもり止め等)やクロスセリング(花粉防止グラス等)などの収益はたかがしれている。狙いはズバリ後半に書いてある、「他の売り場の販売増」というところだ。とにかく来店頻度を増やしたいのである。
4月2日付の日経MJ記事では家電量販店「コジマ」の会長のインタビューコラムが掲載されていた。リフォームや太陽光家電の販売を住設関連の商品をパッケージ化し、LIXILグループと共同で販売を強化するという主旨であった。家電、特に白物家電を販売するタイミングで新たな関連商品として販売する作戦だ。
一方、ビックカメラは前述の通り、家庭内個人(例えばオトーサン)向けのPC関連などのいわゆる黒物家電に触れさせる機会を増やすことが何よりの目的なのだ。そのため、メガネはほとんど収益を見込んでいないだろう。いわゆる「ロスリーダー」として設定しているに違いない。そうでなければ、「レンズ込みで14800円」という価格は安すぎる。ちなみに、シルエット社の製品はフレームだけで3万円台である。
家電バブル崩壊はもうすぐそこまで来ているはずだ。そのための生き残りに家電量販各社が知恵を絞っている。
戦略=目的+実現手段。目的は生き残り。すると、両者の戦略の要はコジマが企業の成長戦略を考える「アンゾフのマトリックス」でいうところの、「新商品開発」。つまり、既存の顧客に新たな商品を販売すること。同様の取り組みは業界最大手のヤマダ電機も展開している。一方、ビックカメラはメガネの収益を度外視した「ロスリーダー」として、既存の商品の販売機会をさらに深掘りする「市場深耕」にかけているのである。
両社の知恵の絞り合い。どちらが奏功するかはまだわからないが、今後の市場動向と共に注目したい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。