抽象的に考える力~喩え話をどう現実に展開するか

2012.04.15

仕事術

抽象的に考える力~喩え話をどう現実に展開するか

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ディズニー映画『ファンタジア』。ミッキーマウス扮する「魔法使いの弟子」は箒(ほうき)に魔法をかけ、自分に代わって水汲みをさせるが…。この寓話からあなたは何を学び取るだろうか。

 きょうは抽象的思考のひとつである「比喩で考える」について書く。比喩で考えることには2つの種類がある。

 1つは、「比喩の凝結」=ものごとを比喩表現に落とし込む思考。
 もう1つは、「比喩の展開」=比喩表現を他のものごとへ応用する思考。

 きょうはその中で、後者「比喩の展開」を取り上げる。

* * * * *

◆共通性を見出して括る…それが抽象作業
 まず、「抽象的に考える」とはどういうことかを改めて押さえることから始めたい。抽象とは、ものごとのある性質を引き抜いて把握することをいう。抽象の「抽」は「抜く・引く」という意味で、「象」は「ようす・ありさま」のことだ。

 図1を見てほしい。横に「ヒト」「キリン」「カエル」「ミジンコ」「サクラ」と並んでいる。そこでまず「ヒト」と「キリン」を括る〈共通性①〉は何だろうか。次に「ヒト」と「カエル」を括る〈共通性②〉は何だろうか。そういう具合に〈共通性③〉〈共通性④〉に入る言葉を考えてほしい。
 ……正解の一例をあげると、順に「哺乳動物」「脊椎動物」「動物」「生き物」となる。このように複数の物事の間に何かしらの共通性を考えるとは、簡単に言えば、グループ分けをしてそこにラベル張りをする作業でもある。その作業をするとき、私たちは必然的に、そこに並んでいる物事の外観や性質から特徴的な要素を引き抜き、どんな括りで分類できそうかを考える。これがまさに抽象的に考えることにほかならない。

 より多くの物事、より関係性の弱い物事を括ろうとするほど、そこに付けられるラベルはより多くの曖昧さを含むようになる。共通性①の「哺乳動物」と、共通性④の「生き物」とを比べてみてもわかるとおり、後者のほうが概念の範囲が広く、その分だけ曖昧さが増す。抽象度を上げて考えることは曖昧さを伴うのだ。

◆「魔法使いの弟子」から何を学びとるか
 では、「比喩の展開」を考えていこう。「比喩の展開」とは、「比喩表現を他のものごとへ応用する」思考のことである。
 「魔法使いの弟子」という寓話(教訓や諷刺を含んだ喩え話)をご存じだろうか? ドイツの文豪ゲーテは、この古い寓話を詩文に取り込み、それをフランスの作曲家ポール・デュカスは、1897年に交響詩として楽曲化した。そしてこの寓話は1940年、ディズニー製作のアニメーション映画『ファンタジア』によって幅広く知られることとなる。映像化されたシーンはこんな感じだ。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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