読書には、「啓発の読書」「獲得の読書」「娯楽の読書」がある。ここでは、あらためて啓発の読書――著者の表現した世界を鑑(かがみ)にして自分の世界を耕すという負荷作業――についてまとめる。
私はこれまで出版社との縁に恵まれ、何冊か本を刊行してきました。今年も2冊出す予定で、現在執筆を行っています。特にベストセラーを出すほどの実力者ではありませんが、きょうはものを書くこと、そして本を読むことについて感じていることを書きます。
さて、ものを書くのが「アウトプット」とすれば、読書は「インプット」です。私は自著の執筆に向かうとき、次のことを意識します。
「良書を読んで深呼吸をしよう。
深く吸えば、深く吐ける。
大きく吐けば、大きく吸える」。
人の思考は、みずからが読んできたものに相応して、大きくもあり小さくもある、深くもあり浅くもある。
ですから、深い次元の本を求め、深く汲み取ろうと努力を続けていくと、自分が書くものもじょじょに深さを増していきます。また、大きな本を書こうという意欲をもてばもつほど、大きな本と出会えるようになる。どんな本が真に大きな本なのかが見えてくるようになる。
本(=著書)とは不思議なものです。本は、その書き手の知識体系や観念世界、情念空間をまとめたものです。読み手にとっては、自分の外側にある一つのパッケージ物なのですが、それがひとたび読書という行為を通じて、自分の内面に咀嚼されるや、自分の新たな一部となって、自分の知識体系・観念世界・情念空間をつくりかえます。これが本の啓発作用というものです。
その意味では、読書は飲食と同じ。
良い食事は、良い身体をつくり、動くエネルギーとなる。
良い読書は、良い精神をつくり、意志エネルギーとなる。
本は、自分の外側にある一つの縁であり、それを摂取することによって自分の内側を薫らせるものです。
* * * * *
私は、読書の役割を主に次の3つでとらえています。
〈1〉啓発の読書
〈2〉獲得の読書
〈3〉娯楽の読書
1番めは冒頭触れたとおりです。啓発とは「開き・起こす」ということです。「啓発の読書」の開き・起こすメカニズムは図に示すとこんな感じでしょうか。
私たちは、まず本を開いて文章を読んでいく。最初は【1】「著者の表現世界の中を泳ぐ」わけです。そうするうち、著者の伝えてくる内容が、自分にまったく新しかったり、自分が既にもつ考え方と異なったりして、【2】「自分の中の知の体系に揺らぎが起こる」。
揺らぎを覚えた自分は、それを排除するか、それを取り込んで、【3】「新しい知の体系を再構築しようとする」。そして、【4】「その再構築した体系であらためて著者の書いていることを咀嚼しようと試みる」。
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。