行動経済学と「精緻化見込みモデル」

2012.07.05

営業・マーケティング

行動経済学と「精緻化見込みモデル」

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

行動経済学の権威、ダニエル・カーマンは、私たちの「思考(判断や意思決定)方法」には「2つのシステム」があることを示しています。

2つのシステムとは以下の通り。

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・システム1

直感的な情報処理を行なうもの。
多くは過去の行動、経験や記憶、ちょっとした手がかりに基づいて簡便に迅速に判断します。

消費行動であれば、「いつも購入しているから」という理由で選択する場合は、システム1を採用しています。

「ちょっとした手がかり」というのは、単に、「友人が持っているから」「好きなタレントが宣伝してるから」といった、表面的な選択理由のことです。

・システム2

合理的・論理的情報処理を行なうもの。
様々な情報を多面的に評価・検討し、熟慮した上でできるだけ合理的に判断する方法です。

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人は、時と状況に応じて「システム1」と「システム2」を使い分けています。なぜなら、思考すると時間とエネルギーを節約するためです。

例えば、「歯ブラシ」を買い換えるたびに、「今回はどのブランドにしようかな?」と熟考する人は少ないと思います。ほとんど思考停止状態で、「いつものやつ」を買い物カゴに入れるのではないでしょうか?(システム1)
 
一方、「自動車」を購入するとなったら、即金で買えるリッチマンを除き、どのメーカー・車種にするか、じっくりと時間をかけて検討するはずです。(システム2)

行動経済学では、直感に頼った簡便な意思決定方法である「システム1」が、意思決定に対して様々なバイアスを与えていることを指摘し、こうした様々なバイアスを生み出すものを「ヒューリスティック」と呼んで研究対象としているわけです。

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さて、消費者行動研究でも類似の仮説がありました。

「精緻化見込みモデル」(Elaboration Likelihood Model)

です。

これは、広告などのマーケティングコミュニケーションに対する消費者の情報処理方法についての理論。以下の通り、やはり「2つの方法」を私たちは使い分けているという考え方です。

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・周辺的処理ルート

対象商品(カテゴリー)に対する関与度(関心やこだわりの強さ)が低く、かつ(あるいは)情報処理能力があまり高くない場合に採用されやすい。
直感的、経験的、表面的な手がかりに基づいたブランド選択。
システム1に対応

・中心的処理ルート

対象商品(カテゴリー)に対する関与度が高く、かつ、情報を的確に評価できるだけの情報処理能力がある場合に採用されやすい。
合理的、論理的にブランドを選択する。
システム2に対応
   
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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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