『宣伝会議』の「座談会記事」において、ミツカンの安田氏(広告、PR、商品ブランドサイト担当)は次のように述べています。
“これまで小さな機能の差を訴求しすぎていたのではないかと考えていました。(消費者は)なんとなく好きだとか親近感があるといったシンプルな理由で購入を決めているのではないか、と。”
“特に、食品の場合、競合商品との差は好みの問題になってくるのに、企業側が理屈をこねくり回していたのではないかと。”
昨日のブログ記事(「感情」で決めて、「理屈」で言い訳)でご説明したように、単価が安い食品などでは、じっくりと比較検討してブランドが選択されることは少ないのです。多くは、「なんとなく好き」とか「馴染んでいるから」といった「感情的な理由」で直感的に選択されています。
したがって、対消費者コミュニケーションにおいては、まず、感情を揺さぶり、端的に言えば「いいな!」と感じてもらえる「感情訴求」を重視する必要があります。
ところが、安田氏の発言を読むと、日常生活で利用される食品を作っているメーカーでさえ、機能や性能、品質などの「規格競争」に陥りがちであり、対消費者コミュニケーションにおいても、
理性に訴える=「理性訴求」
に重点を置きすぎてしまう傾向があることがうかがえます。
実際、ロッテにおいても、
“最近の商品の傾向として、「お口のエチケット」や「ミント味」など、商品の品質の良さや機能性価値を追求するものが多く、自分の感性にあった商品を衝動的 に購入する傾向のある若年層には魅力的に映っていないのではないか?”(宮下慎氏、ロッテ・ブランド担当ガム企画室主査)
という仮説にたどり着いたとのこと。
そこで、刺激が強く、爽快感のあるガム、
「ZEUS」
の新発売キャンペーンでは、20代男性をターゲットに、「感性的に買って体験するという消費行動」を起こすことを狙った「感情訴求」が主体のコミュニケーションが展開されたのです。
さて一方で、「スバル」の富士重工業、岡田貴浩氏(広告担当)は、宣伝会議の座談会で
「ぶつからないクルマ?」
のキャッチフレーズで訴求した運転支援システム、「アイサイト」について次のように述べています。
“このキャッチフレーズでは端的に機能を訴求しました。実は最近、情緒価値だけではお客さまが動かなくなったと感じているからです。例えば、キャンプに行くのも、4WDではなく軽自動車でも構わないと思う方が増えている時代、「この車に乗って、どこにいこう・・・」という世界観で伝える表現は響かなくなっています。”
自動車は、高額の耐久消費財であり、本来、十分に比較検討してブランドが選択される商材です。しかし、とんがった特徴のあるクルマが少なく(特に日本車は)、規格面での差異が小さいため、情緒的価値を付加するしかない、すなわち、「感情訴求」をこれまでは重視するしかなかったということでしょうか。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。