誰が・ナゼ飲んだ?アクエリアス ゼロ5000万本

2012.07.31

営業・マーケティング

誰が・ナゼ飲んだ?アクエリアス ゼロ5000万本

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

日本コカ・コーラの「アクエリアス ゼロ」が発売10週間で5000万本の販売を突破したという。どのような新たなターゲットとポジショニングを開拓したのであろうか。

 暑い。連日、うだるような暑さである。それは室内にいても容赦ない。国立環境研究所「平成23年度熱中症患者情報速報」によれば、熱中症の36%が室内で発生しているという。そこで、冷たいものを飲む。震災以降、ミネラルウォーターの備蓄をしている家も少なくない。だが、それではダメなのだ。電解質(ナトリウムなど)も補給しなくては体液が薄まってこれまたヤラレてしまうのだ。そこで、スポーツ飲料の出番である。水分吸収がいい。でも待てよ。スポーツしないのに、スポーツ飲料。なにやら最近、ポジショニングが変化していないだろうか。

 スポーツ飲料の草分けといえば「ポカリスェット」である。しかし、同商品が一貫して訴えてきたポジショニングは「水分吸収がいい」。それ一本だ。
 ポジショニングは通常、2つのキーワードを使って二軸で表現する。しかし、たった一言でその商品の魅力がより鮮烈に伝わるのであれば、それにこしたことはない。例えば、プレミアムカーのBMW。「駆け抜ける喜び」。単なる「走る」ではない。走ることによって喜びまで与えてくれるのがウチのクルマですよ、とひと言でエンスー(クルマ好き)をノックダウンする。同様に、輸液の最大手である大塚製薬は、「水分吸収」一本で勝負を賭けたのだ。

 飲料業界第1位の日本コカ・コーラは、しかし、そんな動きを見逃さなかった。リーダーの戦略の基本である「同質化」。先行する商品と同様のモノを開発して強固な販売力を活かして市場を席巻する戦略である。そうして開発されたのが、「アクエリアス」だ。その時、より「スポーツ」という消費者のKBF(Key Buying Factor=購入理由)を加えたのである。

 さて、「アクエリアス ゼロ」は誰が飲んでいるのか。スポーツをするなら、カロリーを消費する。しかし、チョビッとしかカラダを動かさない層にとってスポーツドリンクのカロリー数は脅威である。すると、「アクエリアス ゼロ」が取っているポジショニングは、「水分吸収」×「太らない」で、「スポーツ」はどこかに消えてしまったことを意味している。しかし、そのポジショニングが、潜在的にスポーツ飲料のカロリーを気にしつつ、水分吸収の機能に魅力を感じていた層にウケたのである。

 「アクエリアス ゼロ」はアクエリアスのブランドエクステンションである。しかし、他にも数ある派生商品とは異なり、本体ブランドが取り込めていないターゲット層を見事にすくい取った商品であるといえる。この商品はさらに暑くなるこの夏をバネにして「それいけ1億本!」という勢いでブランドの新定番になって行くに違いない。

 

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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