5月7日の発売以来累計5000万本を突破したアクエリアス ゼロ。8月に入ってさらにスピードは加速し、1億本の大台も視野に入っているという。その背景には「成功すべくして成功したマーケティング計画」が存在することが、日本コカ・コーラ、アクエリアス ゼロ担当マネージャーへの取材から明らかになった。
■中長期計画
「それまでのアクエリアスは、 “スポーツ飲料”のイメージが強かった。それをより幅広い概念に拡大したかったのです」。スポーツマンらしい日焼けして引き締まった身体に笑顔が印象的なアクエリアス ゼロ担当マネージャーは意外な言葉から話を始めた。
時は2010年に遡る。「Fit body. Fit life. いきいきしたカラダへ」。幅広い人々に向けたブランドとなるため、アクエリアスの中長期ブランドスローガンが設定されたのである。
■危機
スポーツ飲料カテゴリーは2004年をピークに下降傾向を示し始めた。カテゴリー№1の日本コカ・コーラにとっては由々しき事態である。シェア第一位にとって、カテゴリーの衰退はそのまま自社の業績悪化に直結するからである。
年代別の飲用状況を調査すると、人口のボリュームが大きい40~50歳代が「スポーツ飲料離れ」を示していることが確認された。ミネラルウォーターや茶系飲料へのスイッチが起こっているのだ。
■追い風
2010年。その夏も記録的猛暑に見舞われた日本。売上の下落傾向に歯止めがかかった。さらに「熱中症」の認知率も79.3%を越えた。(2011年日本コカ・コーラ調べ)。アンケートを採ると、ナトリウム、電解質、イオン…といったキーワードも数多く対象者から聞き出せたという。
■市場のホワイトスペース
アクエリアスのベネフィットとは「優れた水分補給」であると定義されていると担当マネージャーは語った。「優れた」とは何か。ブルーのパッケージである「アクエリアス」は4種類の電解質が含まれ、適度な糖分と電解質によって「水より優れた水分補給」を実現する。一方、2005年に発売されたイエローのパッケージである「アクエリアスビタミンガード」はビタミンCが1000mg配合されており、「ビタミンCの水分補給」を実現する。では、「スポーツ飲料離れ」をしている35歳以上にとっては何が有効なのか。そこに手が付けられていないホワイトスペースが存在した。「全方位」で展開をする「リーダーの戦略」ならではの展開である。
■ターゲットの未充足ニーズ
ターゲットである35歳以上のニーズは何か。それは2008年に特定健康検査(いわゆるメタボ健診)が法制化されて以来高まった「お腹のたるみ」や「中性脂肪」の抑制である。そのため、駅でエスカレーターを使わずに階段を使用する。通勤時に1駅分多く歩くなどの軽い運動を実践する人も少なくない。また、味の好みもターゲットと10~20代では異なることが分かった。ターゲットは、よりスッキリした、甘さが控えめの、濃すぎない味を好む傾向がある。激しい運動をしないために、ニーズも嗜好も異なるのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。