試して買って、食べてみて!ロッテ「チョコパイ」の場合

2012.09.10

営業・マーケティング

試して買って、食べてみて!ロッテ「チョコパイ」の場合

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 9月9日付日経MJ記事によれば、ロッテはチョコレートケーキ菓子「チョコパイ」の発売30周年を前に、製品リニューアルと大規模販促を展開するという。その狙いは何だろうか?

 製品リニューアルは既に完了し、8月21日に発売が開始されているという。ケーキ生地のしっとり感や口溶けの良さを向上し、チョコレートの風味も向上させたという。しかし、そこまでは「いいモノを作る」という話。モノ(Product)がいいだけでは売れない。ロッテは販売店の棚をしっかり押さえるというチャネル(Place)の支配力に長けているため、配荷も順調に進むだろう。だが、問題はそこからだ。消費者に手に取って、買ってもらわなければ話にならない。そこで、広告・販促(Promotion)の攻勢と、それと連動した価格(Price)設定が求められる。

 日経MJの記事によれば、広告・販促攻勢は30周年を迎える来年9月まで続くという。CMの投下量もかなりのものになるだろう。店頭販促(POP)も充実させるようだ。だが、ここはそれ以上に「売り方の工夫」に注目してみたい。
 ロッテが今回展開したのは「ばら売り」である。通常は店頭予想価格298円前後の6個入り箱や9個入り大袋で販売されているが、「お試し」用の1個30円の小袋も併せて陳列。スーパー、コンビニで100万個を売り、通常品の販売につなげるという。

 消費者の態度変容モデルにAMTULというものがある。Awareness=認知→Memory=記憶→Trial=試用→Usage=日常利用→Loyalty=ロイヤル顧客化である。そのフレームで考えれば、CMの大量投下で認知は獲得できる。売り場の棚を良位置で獲得し、POPを並べれば、「買いたくなったらいつでも買おう」という記憶を消費者に植え付けられる。だが、せっかくリニューアルしても普段から購入習慣がない消費者の手に取らせることは難しい。そこで、「お試し・30円のばら売り」なのだ。つまり、Trial=試用。棚(Place)は、通常商品の横だけではなく、レジ横などの好位置も確保してくるだろう。そして、30円という価格設定(Price)も絶妙だ。レジ横の「ついで買い」の定番、「チロルチョコ」は20円。それと10円差でかなりのボリュームと満足感が得られるのである。ついつい手が伸びる人も多いだろう。

 それでも菓子になかなか手を伸ばさない人もいる。そんな人にはどうするか。チョコレートが溶ける暑い季節が終わったら、ばら包装品を用いて街頭サンプリングキャンペーンも展開されるだろう。そうして、徹底した試用(Trial)を促進し、通常商品の日常利用(Usage)につなげていくのである。

 「チョコパイ」が製品を全面リニューアルするのは初めてだという。ロングセラー商品も黙っていては売れない時代だ。故に、昨今、製品リニューアルなどで勝負をかける例が散見される。ロングセラー商品はロイヤル顧客を持っているという優位点があるが、その顧客がやがて歳を取って離脱していくというリスクも抱えている。故に、リニューアルで新たな顧客層を取り込んでいくことが欠かせないのである。
 「チョコパイ」は広告・ばら売りなどの攻勢でどこまで試用(Trial)→日常利用(Usage)という顧客を取り込めるかが、定番の座に君臨し続けるカギとなると予想される。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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