人は、商品が実現してくれるかもしれない 「理想」(to be) を夢見て購入するのであり、 「現実」(as is) を提示されてもワクワクできないものです。
このところ、積極的に広告展開している、サントリーの健康食品、
「セサミンEX」
は、男女2人の後姿のヌードが目を引きますね。
アテンション(注目)効果はバッチリです。
ただ、この男女の引き締まった若々しいからだつきから見て、おそらく30代前半くらいでしょう。ひょっとしたら20代かもしれません。
セサミンのメインターゲットは
40代以上
ですから、メインターゲットからは、10歳以上も若いモデルを登場させているということになりますね。
過去のセサミンの広告(テレビCM、新聞広告)は、公式Webサイトで閲覧することができます。昨年(2011年)は当時45歳の前田典子さんでした。それ以前は、
・登山家の三浦雄一郎さん(当時78歳)
・女優の浜美枝さん(当時67歳)
など、メインターゲットと同世代の著名人が登場していました。
ところが、昨年は40代の前田さん、そして今年はおそらく30代と、広告に起用するモデルを大きく若返らせています。
健康食品は、体の衰えを感じ始める中高年が、強い関心を持つ商品カテゴリーであり、
「若くありたい」
「元気でいたい」
といった欲求を充たしてくれそうという「期待感」で購入するものですね。
その時、頭の中にイメージしているのは、
「今の自分」(as is)
ではなく、若者のような、引き締まった体や、ハリのある肌を取り戻している
「理想の自分」(to be)
なのです。
したがって、広告においては、
「理想」=「夢」
を提示してあげたほうが、より強く購入意欲をそそることができる。セサミンの近年の広告の背景にはそんな判断があるのでしょう。
ちなみに、衣服の展示用に用いられる
マネキン(人形)
の大手、吉忠マネキン(株)では過去に、
60代シニア
の体型を忠実に再現したマネキンを製作したことがあったそうです。
これは、おなかがせり出し、全体に小太りな典型的な「シニア体型」にも似合うファッションを展示する上で、最適なマネキンのはずです。
ところが、このマネキンは、消費者にはそっぽを向かれてしまい、失敗に終わりました。ありのままの「現実の自分」を提示されたくはないということだったのでしょう。
人間心理はこのように複雑なものです。現実の自分と理想の自分との間で揺れ動いている。
したがって、ターゲット顧客の心を動かすクリエイティブ、あるいはメッセージ開発に当たっては、人間心理を深く洞察しなければならないのです。
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2012.12.05
2015.07.10
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。