「インサイト」とは、 「ありそうでなかったもの」 の開発につながるヒント(手がかり)です。 ただ、そのヒントは、当初は平凡な発見にしか思えないことが多い。そのヒントについて深く、ディープに掘り下げ、具体的な商品コンセプトに役立つ 「ディープインサイト」 へと仕立て上げる必要があります。
文具・オフィス家具メーカーのプラスが、今年(2012年)1月に発売した新しいハサミ、
「フィットカットカーブ」
のシリーズ(3タイプ、全16アイテム)が、好調な売れ行き。
8ヶ月で異例の160万本を販売しています。
同社としては、
「10年後のスタンダードとなる圧倒的No.1商品を目指した」
とのことですが、狙い通りスタンダードの地位を確保できそうな勢いです。
さて、業務用の特殊なハサミはさておき、汎用的に使われるハサミは、百均でも買える、ありふれたコモディティのひとつ。もはや技術革新の余地はそれほどなさそうですし、どれを買っても大差はないように思います。
そんな現状において、フットカットカーブは、どのような「インサイト」に基づいて開発されたのでしょうか?
販促会議(2012.12)の記事によれば、プラスでは、
家庭でのはさみの利用状況
についてのアンケート調査を約2700人を対象に実施しました。
その結果、ハサミに対する要望として多かったのが、
「切れ味」
に関するものでした。
具体的には以下のような要望です。
・切れ味が持続して欲しい(21%)
・負担なく軽く切りたい(6%)
・メンテナンスして永く使いたい(5%)
これらの要望、こういっちゃ失礼ですが、ごく平凡な要望ですよね。
ぱっと見の企業側の反応としては、
永く使ってればどうしても切れ味が落ちてくるのは仕方ない。
買い換えるか、刃を研ぎなおすとかしてもらうしかないよねぇ~
みたいなところでしょうか。
しかし、プラスさんとしては、意外な結果だったようです。同社のハサミの「切れ味」には、自信を持っていたからです。
そこで、ヒアリング調査を実施して、利用実態を掘り下げたところ新たな発見が。
それは、紙以外の多様なもの、つまり、
プラスチック、ビニール、ダンボール、布、観葉植物
などを切ることにも使われていたこと。
紙以外の比率はなんと92%でした。
確かに、家庭では1本のハサミでいろいろ切りますね。切る対象に合わせて、いちいち専用のハサミを用意しないものです。私も、観葉植物の剪定に普通のハサミを使っています。また、ビニールやダンボールとかだと、なかなかうまく切れなかったという体験が確かにある。
プラスではこれらの調査を踏まえ、
「いろいろなものがスパッと切れるハサミ」
の開発に着手しました。
そして、丸くカーブした刃を持ち、硬いものから柔らかいものまでしっかり切れる
「フィットカットカーブ」
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。