「ディープインサイト」がヒット商品を生む!

2012.11.02

営業・マーケティング

「ディープインサイト」がヒット商品を生む!

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

「インサイト」とは、 「ありそうでなかったもの」 の開発につながるヒント(手がかり)です。 ただ、そのヒントは、当初は平凡な発見にしか思えないことが多い。そのヒントについて深く、ディープに掘り下げ、具体的な商品コンセプトに役立つ 「ディープインサイト」 へと仕立て上げる必要があります。

文具・オフィス家具メーカーのプラスが、今年(2012年)1月に発売した新しいハサミ、

「フィットカットカーブ」

のシリーズ(3タイプ、全16アイテム)が、好調な売れ行き。

8ヶ月で異例の160万本を販売しています。

同社としては、

「10年後のスタンダードとなる圧倒的No.1商品を目指した」

とのことですが、狙い通りスタンダードの地位を確保できそうな勢いです。

さて、業務用の特殊なハサミはさておき、汎用的に使われるハサミは、百均でも買える、ありふれたコモディティのひとつ。もはや技術革新の余地はそれほどなさそうですし、どれを買っても大差はないように思います。

そんな現状において、フットカットカーブは、どのような「インサイト」に基づいて開発されたのでしょうか?

販促会議(2012.12)の記事によれば、プラスでは、

家庭でのはさみの利用状況

についてのアンケート調査を約2700人を対象に実施しました。

その結果、ハサミに対する要望として多かったのが、

「切れ味」

に関するものでした。

具体的には以下のような要望です。

・切れ味が持続して欲しい(21%)
・負担なく軽く切りたい(6%)
・メンテナンスして永く使いたい(5%)

これらの要望、こういっちゃ失礼ですが、ごく平凡な要望ですよね。

ぱっと見の企業側の反応としては、

永く使ってればどうしても切れ味が落ちてくるのは仕方ない。

買い換えるか、刃を研ぎなおすとかしてもらうしかないよねぇ~

みたいなところでしょうか。

しかし、プラスさんとしては、意外な結果だったようです。同社のハサミの「切れ味」には、自信を持っていたからです。

そこで、ヒアリング調査を実施して、利用実態を掘り下げたところ新たな発見が。

それは、紙以外の多様なもの、つまり、

プラスチック、ビニール、ダンボール、布、観葉植物

などを切ることにも使われていたこと。

紙以外の比率はなんと92%でした。

確かに、家庭では1本のハサミでいろいろ切りますね。切る対象に合わせて、いちいち専用のハサミを用意しないものです。私も、観葉植物の剪定に普通のハサミを使っています。また、ビニールやダンボールとかだと、なかなかうまく切れなかったという体験が確かにある。

プラスではこれらの調査を踏まえ、

「いろいろなものがスパッと切れるハサミ」

の開発に着手しました。

そして、丸くカーブした刃を持ち、硬いものから柔らかいものまでしっかり切れる

「フィットカットカーブ」

次のページ「硬いもの、柔らかいもの、なんでもスパッと 切れるハサ...

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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