購買履歴データやWebアクセスログデータなどの行動データと、SNSデータ(ツイッターやフェイスブックに投稿された生の声)をユーザー単位で結びつける、すなわち統合された「シングルソースデータ」を分析することによって新たに見えてくることがあります。
今日は、昨日に引き続き、
「ビッグデータ時代を勝ち抜くためのデータマイニング活用セミナー」(IBM SPSS主催)
に登壇された清水聰氏(慶應義塾大学教授)のお話の中から面白い事例をご紹介します。(なお、事例の元となっている調査概要については、まだ公開できないものらしく、具体的な数値などはお話されていません)
清水氏が実施した
消費者対象のビール系飲料の調査
によれば、
・アサヒ・スーパードライ
・キリン・淡麗(生)
は併飲している消費者が多いことがわかっています。
その理由としては、
「この2ブランドの味が似ているから」
ということのようです。
どのように併飲しているかというと、
平日は淡麗を飲み、週末はスーパードライを飲む
というパターン。
スーパードライ&淡麗の組み合わせだけでなく、平日は価格の安い「発泡酒」や「新ジャンル」を飲み、週末はレギュラービール、あるいはプレミアムビールを「ごほうび」的に飲むという消費行動については、以前から指摘されていたことではあります。
ビール系飲料にも人によって味の好みがありますから、スーパードライが好きな人は淡麗も好きということになるのでしょう。
さて、こうした消費者の購買履歴データだけを‘縦に’分析してしまうと、当然ながら平日飲んでる淡麗の消費量のほうが、スーパードライよりも多いという明白な結果になります。
したがって、「消費量」だけを見るとこの消費者は、
「淡麗のロイヤルユーザー」
と判定されてしまうわけです。
ところが、購買履歴データとWebアクセスログデータ、SNSデータをユーザー単位で統合しシングルソースデータにして‘横’に分析すると別のことが見えてきます。
例えば、淡麗のロイヤルユーザーと判定された消費者のサイト閲覧状況を見てみると、アサヒのWebサイトにはしばしば訪問し、キャンペーンにも応募している一方、キリンのWebサイトにはまったく行っていない。
また、SNS投稿では、
「日曜夜にゆっくりスーパードライを楽しんだ」
などと、スーパードライにはよく言及しているけど、淡麗についてはほとんど書いていないということがわかったのだそうです。
このシングルソースデータの分析からは、上記消費者が本当に好きなのはスーパードライであり、淡麗は(おそらく、経済的な理由から)代替品として平日に飲んでいるのだという(より確からしい)推測が可能になりますね。
ロイヤルティは、
・行動的ロイヤルティ(消費量、購入金額に基づくもの)
・心理的ロイヤルティ(どの程度好きかに基づくもの)
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2013.02.01
2015.07.10
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。