会議室に篭って長時間ブレストしても、あるいはパソコンの前でうんうんうなり続けたところで、なかなか良いアイディアは出ません。 仕事以外の時間の生活、すなわち「ライフ」を充実させてこそ、ちょっとしたきっかけからすばらしい閃きが得られます。
現在日経本紙で連載中の私の履歴書は、オムロン名誉会長の立石義雄氏ですね。
この数日は、自動改札機開発についての秘話ですが、自動改札機の開発において
課題となっていたいくつかの事項は、開発担当者の趣味・余暇の時間に解決策につながるアイディアが生まれていたことを明かしています。
まず、小さな切符に乗車区間や料金などの情報を搭載し、また機械に瞬時に読み取らせる技術開発についての閃き。
開発チームリーダーの田中さんが、ある日、自宅で音楽を聴いていたそうです。当時はまだオープンリールのテープレコーダーだったようですが、プラスチック製テープに磁気が塗ってあるのをみて閃いたわけです。
すなわち、音楽テープと同じように、切符の裏に磁性体を塗ることで情報の搭載と読み込みが可能となりました。
次に、自動改札機に投入された切符が、横になったり、斜めになったりしてうまく出口まで運べないという問題の解決につながる閃き。
機械担当の浅田さんは、久々の休日に子供を連れて渓流釣りに。
川面を流れてきた竹の葉が岩にぶつかってくるっと向きを変えたとき閃いた。
すなわち、自動改札機の投入口の近くに岩に見立てた駒を置くと、切符がきれいに縦に揃うようになったのです。
このように、なんらかの仕事上の問題の解決につながる閃きは、仕事とはかけ離れた場所や状況において得られることが多いものですね。
同じようなことが、日経産業新聞のコラム、「実践WLB(ワークライフバランス)経営」(2012/11/13)にも書かれていました。
玩具メーカーA社でヒット企画や商品を生んでいるエース級の社員のうち、退社時間が早い3人がどのようなライフ(生活)を送っているかをインタビューしたところ、
・A氏は、異業種交流会に積極的に参加
・B氏は、コンサートやアートギャラリーに足を運び
・C氏は、自宅近くの公園に子供たちと行き、自社の玩具を近所の子供たちに遊ばせたり壊すのを観察
といったように、仕事以外のライフを楽しむ、また活用することで、斬新なアイデアを得ていたことがわかったのです。
そもそも、優れたアイデア、使えるアイディアは、
「異質なもの」
の組み合わせから生まれます。
ですから、普段からできるだけ
多様な経験・情報
を得るように心がける必要があります。
逆に、目先の仕事があるからと、朝から晩まで、あるいは休日まで出勤してデスクに座っているだけだと、良いアイデアは全く出なくなってしまうでしょう。
(株)ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏が、以前TEDのプレゼンテーションにおいて、
「日本企業の人たちは働きすぎ、会社に篭ってばかりいるから、ヒット商品のアイデアが出なくなる」
といった趣旨のことを指摘されていました。
まさに、今の日本企業において魅力的な商品が見当たらなくなったのは、あいかわらずの長時間労働を強いられ、ライフが充実していないからなのかもしれません。
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2009.10.27
2008.09.26
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。