思考を3軸でとらえたのが「思考球域〈Thought Sphere〉」である。「大きな問い」を発し、「大きな答え」をつかむためには、「キレ」と「コク」の領域を大きく往復することが欠かせない。
◆「思考の3軸」がつくる球状空間
私たちはこれまで、思考というものについて、論理法や発想法といったアプローチからさまざまに分類をしたり、全体像を描いたり、またそこに命名をしてきた。「帰納法/演繹法」「水平思考/垂直思考」「右脳思考/左脳思考」、また「ロジカルシンキング」や「フレームワーク思考」「(川喜田二郎氏による)KJ法」など……人間の思考は、まさに思考を尽くして捉えようとしてもその奥深さはきりがなく、そのテーマを取り扱おうとする者に無数の切り口を与えてくれる。
そこで私は今回、次の3つの軸で思考というものをとらえようと試みる。
〈1〉思考の上下軸───「抽象的/具象的」
〈2〉思考の左右軸───「論理的/イメージ的」
〈3〉思考の前後軸───「主観的/客観的」
つまり思考には、
○物事を抽象化して本質をつかみにいくか、それとも、具象化に寄っていって個別の実態を見ようとするかといった「上下方向」があり、
○論理的に分解し組み立てて理解するか、それとも、直観的なイメージで把握するかといった「左右方向」があり、
○主観的・意志的に考えを前面に押し出していくか、それとも、一歩引いて、客観的・説明的に物事を見つめるかといった「前後方向」の3方向があると思えるからだ。
この3軸で形成される空間を球体に見立てたのが下図である。
これを私は「思考球域」と名づけている。英語で造語表記をするなら「Thought Sphere」(ソート・スフィア)となるだろうか。
「Sphere」とは、球形のもの、作用や活動が及ぶ範囲、天空を意味する単語である。私が抱く思考の概念イメージは、まさにこの「Sphere」がぴったりだと感じている。作用・活動の領域が球状に広がり、しかも外縁部には定かな境界線がなく、その先はもっと大きな空間につながっているというまさに天空的なものを想像するからである。
◆「キレ」の思考・「コク」の思考
さらにここで私は、対照的な2つの思考に特別な名づけをしたい。一つは、「具象×論理×客観」領域を基地とする思考を『キレの思考』と名づける。これは、典型的にはサイエンスの人びとが行っているものと考えればわかりやすいだろう。そしてもう一つは、「抽象×イメージ×主観」領域を基地とする思考を『コクの思考』と名づける。これは、典型的にはアートの人びとが行っているものである(下図)。
「キレ・コク」は、ご存じのように、ビールやコーヒーなどの味を評価する言葉としてよく用いられる。「キレ(切れ)」は、辛いや酸っぱいなど舌の上での刺激が明瞭で、その後、すっと味が消えていくことをいう。他方、「コク」は、複雑に入り混じった味が余韻をもって舌や喉、口内に留まることをいう。
私は、思考にも「キレ」と「コク」という性質の転用が可能だと思う。「キレの思考」と「コクの思考」の特徴をまとめると次のようになる。
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。