調達・購買部門は自社の中では唯一サプライヤ(売り手)の方向から考えられる(考えなければならない)立場です。 一方でサプライヤに対しては買い手を代表して考える(考えなければならない)立場です。
2008年ごろですか、「VOS(Voice of Supplier)」のご紹介をしました。
「VOS」とは、正に「サプライヤの声」を聞くということです。その時はあるベテランバイヤーが「VOS(Voice of Supplier)」を経験し、そのバイヤーの「我々は片側から見た半分のことしか分かっていなかった」というフレーズを紹介しました。
調達・購買部門は自社の中では唯一サプライヤ(売り手)の方向から考えられる(考えなければならない)立場です。
一方でサプライヤに対しては買い手を代表して考える(考えなければならない)
立場です。
そういう点からは、双方の視点で一番ものが見れる立場であると言えます。それでも日々の仕事の中で、知らず知らずの間に「半分しか分かっていない」状況に陥ってしまっているのです。
私自身も過去多くのお客様のプロジェクト現場で同様の経験をしています。
クライアント企業を代行してサプライヤさんに我々だけで声を聞きに行くこともあります。
そういう場面で「この要件をこうしてくれれば、もっと安い価格で提案できたんですけど。。契約期間をこう見直してくれたら、計画的な投資ができるので生産性が向上するんですけど。。」という話を聞きます。
「サプライヤの声」を聞くことはそういう点からも非常に重要で調達・購買部門のタコツボ化を防ぐための手法の一つと言えるでしょう。
このベテランバイヤーの企業では当時おかれていた課題(納期遅れ、供給不足が多発)から業務改革プロジェクトが立ち上り、そのプロジェクトの一環として「サプライヤの声」を聞く機会につながった、ということでした。結果的に「サプライヤの声」には多くの示唆があり、その当時の仕組み自体に大きな問題が存在していたことが判明し、その声に応える形で業務改革を推進していきました。
このようにサプライヤから課題を吸い上げることでサプライチェーン全体の問題を解決していこう、というのが「VOS」の大きな一つ目の目的になります。
「VOS」のもう一つの目的は自社を業界他社と比較してどうなのか、を確認できることです。サプライヤは通常、バイヤー企業の業界他社とも取引があります。
「戦略の浸透度」「業務効率化」「ユーザー統制度」「コストの厳しさ」など
業界他社と比較してどうなのか、を知る機会はバイヤー企業には殆どありません。これをサプライヤから吸い上げることで理解できるのです。
しかし、特にこの二つ目のVOSの目的を達成するためにはコツがあります。それはバイヤーが直接「サプライヤの声を吸い上げる」のではなく第三者(例えば私のようなコンサルタント)が声を聞きにいくことです。
VOSの前提条件として「どこの会社のどなたがどういう発言をしたか、はオープンにしない」という約束を事前にしておきます。
これをサプライヤには約束し、尚且つ第三者が声を聞くことでバイアスのかかっていない声を聞くことができるのです。このようにVOSをうまく活用し、課題を抽出、課題解決につなげていった先進的な企業もでてきています。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。