ビッグデータ、大量データが戦略を決める、と言われているがユーザは過剰な期待を抱くべきではない。明確な目的がなければ、膨大なデータに振り回されることにもなりかねない。
いまIT関連で注目されている用語に「ビッグデータ」がある。企業はビジネスにおいてデータや情報を活用するために様々なITを利用しているが、ITにおける「ビッグデータ」とは巨大なデータ、ということでありよく引き合いにだされるのはFacebookなどのソーシャル・ネットワークである。
ビッグデータの特徴はそのボリュームだけでなく扱うデータの種類が多いことだ。数字や文字だけでなく、文章、音声、動画などの非構造化データも含まれ、この取り扱うデータの多さが、従来のデータとビックデータを区別するものかもしれない。そしてすでにビッグデータを活用しているのが、Google やAmazon、FacebookなどのWebサービス事業者で、顧客の属性を捉えて、広告やリコメンデーションなどを打ち出している。
しかしいくら大量のデータがあってもそれだけでは価値はない。企業に必要なのは、そのデータをもとによりよい意思決定をし、企業競争力を強めるのに役に立つ「情報」である。データと情報は同じではないことを心に留めておく必要があるだろう。
またビッグデータを集めても、それに比例して情報量が増えるのではない。たとえばソーシャル・ネットワークにはいくつもの冗長している部分がある。ツイートやシェアされたものは、データ量として増えても、情報としてその価値が2倍になるわけではないからだ。重複が多いほど、それが人々の興味を引くものであったという情報分析を行い、それを即座にビジネスに結びつけるという使い方は危険である。人の興味や嗜好は冷めやすく移ろいやすいことを考えると、ツイートを頼りに商売をすることはあまりにもリスクが大きいからだ(ちなみにツイッターの"Twit"という単語は、バカとかまぬけ、という意味だ)。
IT業界に40年以上たずさわっていて思うのは、特にカタカナやアルファベットを使ったマーケティング用語には注意をしたほうがいいということだ。英語を母国語とする私がわからないような曖昧なものもある。まずは日本語で再考し、日本語で意味のあるものなら検討の余地がある。クラウドコンピューティングもその一つで、かつてデータセンターやリモートコンピューティングサービスと呼ばれたものと、基本的にどこが違うのだろう。
ビッグデータに話をもどすと、その大量データのなかから情報を抽出する場合、その情報は「有益」なものか、または「有益なものに関連」している必要がある。何が有益かの判断を行うのは人間である。大量にデータが増えれば、比例的にとは言わないまでも、それがもたらす情報量も増えてくるだろう。ただし、ビッグデータを集めてデータ量だけ増やしても、「価値のある」情報を見つける確率が増えるとは限らない。むしろ減るのではないだろうか。
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2008.09.26
2010.04.20
トッテン ビル
株式会社アシスト 代表取締役会長
1969年、米国の大手ソフトウェア会社の一社員として市場調査のために初来日し、1972年、パッケージ・ソフトウェア販売会社アシストを設立、代表取締役に就任。2006年、日本に帰化し日本国籍取得。2012年、代表取締役会長に就任。