ムツゴロウ動物王国はなぜ閉園した?

2007.11.22

営業・マーケティング

ムツゴロウ動物王国はなぜ閉園した?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

11月21日の日経新聞東京地域版にひっそりと載っていた記事。<東京ムツゴロウ動物王国25日で閉園>。 来園者数が低迷し運営会社が破綻。畑正憲氏の個人事務所が踏ん張って運営を続けたものの、ついに閉園を余儀なくされ動物を北海道に連れ帰るという動物王国。その失敗原因は果たして何だったのだろうか。

日経の記事には<動物王国の関係者は「もう少しPRができていれば」と反省>と記している。果たして原因は本当にPR不足なのだろうか。破綻の一因ではあろうが、原因はそれだけではないはずだ。失敗の弁で「PR不足」はよく言われることだが、問題の根本を見誤ると何度でも失敗は繰り返される。少し掘り下げて考えてみたい。

■Promotion(コミュニケーション戦略)だけで語るなかれ

PRはマーケティングにおいては、マーケティングミックスの4Pの一つ、Promotion(コミュニケーション戦略)の領域である。マーケティングというと、非常に狭い意味でこのPromotionに属する広告や広報(PR)、セールスプロモーションだけがフォーカスされることがある。しかし、他の3つのP、即ちProduct(製品戦略)、Price(価格戦略)、Place(流通戦略)との整合が欠かせないのである。
関係者の弁である「PR不足」は確かにそうかもしれないが、他の3つのPも検証してみよう。

■Product:動物王国は魅力的だったか?

正直、ここで話が終わってしまいそうなのだが、やはりテーマパークの「製品」としての魅力はコンテンツにある。動物の最大の問題はコンテンツがプアだったことではないだろうか。同園に行ったことがない筆者がテーマパークとしての魅力を云々批評するのははばかられるが、「動物王国」という割にはそこにいるのが犬・猫・馬だけというのはどうだろうか。
今までさんざんテレビで放映されてきた、北海道の動物王国にいる様々な動物たちの姿を想像し、下調べをせずに行って犬・猫・馬だけしか動物がいなかったら落胆しないだろうか。逆に、下調べして、身近な動物しか園にいないと知ったら、足を運ぶ気がするだろうか。斯様に、4PにおけるProductの部分に大きな問題があったと言わざるを得ないのである。

■Price:で、料金は妥当なのか?

上記の通りのコンテンツである。で、料金は大人1700円、子供700円。高くはない。高くはないが、コンテンツを考えるとどうにも微妙な気がする。価格妥当性はやはり製品の品質とのバランスが重要なのだ。親子3人で4100円。ちょっと気軽さにかけはしなかっただろうか。

■Place:あきる野市は遠かった?

動物王国は東京サマーランドに併設されている。場所はあきる野市。車であれば八王子インターを降りて20分程度という。が、電車では地の果てのように遠い。まず、八王子は東京駅から中央特快で50分。そこからバスで30分かけてサマーランドに到着。動物王国にはさらにシャトルバスに乗り換えて5分とのことだ。車がなければまず、東京の西側に住んでいなければ躊躇するだろうし、中央線沿線在住でもちょっと気が重くないだろうか。
ここでも、距離をおしても行きたくなるような魅力があればいいのだが、距離とコンテンツの魅力はやはり天秤にかけられるのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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