明石家さんまさんは、おそらく、いまの日本において「もっとも偉大な」芸能人であるはずです。
明石家さんまさんは、おそらく、いまの日本において「もっとも偉大な」芸能人であるはずです。
さんまさんは、たとえば「素人」の意味を、誰にも気づかれないように変えてしまいました。そのもっとも大きな功績は「恋のから騒ぎ」でした。さんまさんの前と後では、「素人」の意味は変わってしまっています。
視聴者--。すなわち私たちはその意味の変化に気づくことなく、素人に対する印象を入れ替えてしまったのです。
さんまさんは、これまで誰もが関心を寄せずに無視していた(いや、無視できていた)ひとたちに、あえて関心をいだきました。たとえば、単なるOLとか、単なる女子大生とか、それすらない単なる女性たちです。
さんまさんだけが、関心を抱かざるをえなかった人たち--、かつてときにそれは「弱者」と呼ばれました--。その「もてはやし」ともいうべき、さんまさんの関心は、無視されていた人たちの救済となり、いまでは多くの芸能人が行う「いじり」と同義になってしまいました。
私はさんまさんの番組に二回ほど出たことがあります。
関心や愛のツッコミのなかに、実は侮辱と見下しが感じられるひとと、侮辱と見下しのなかに、むしろ関心や愛が感じられるひとがいるとしたら、明石家さんまさんはあきらかに後者でした。
さきほど例に出した「恋のから騒ぎ」は、ある種の弱者救済の共同体、もしくは組織ともいえました。しかし、その共同体や、組織は、さんまさんの範囲を超えてしまったときに、その素人をほんとうの意味で自立できないひとにしてしまう可能性をはらんでいました。
おそらく、それにこそ、愛や関心の真の残酷さがあります。
たぶんですが、明石家さんまさんの批評や評価は、芸能の一大仕事になるはずです。誰かやらないかな。
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2009.02.10
2015.01.26
未来調達研究所株式会社 取締役
大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。