愛のないセックスのほうが、セックスのない愛よりマシだ

2013.06.10

経営・マネジメント

愛のないセックスのほうが、セックスのない愛よりマシだ

坂口 孝則
未来調達研究所株式会社 取締役

愛のないセックスのほうが、セックスのない愛よりマシだ、よね、きっと

「愛のないセックスのほうが、セックスのない愛よりマシだ」という名言がある。この「セックス」を「仕事」と置き換えてみたらどうだろう。「愛のない仕事のほうが、仕事のない愛よりマシだ」となる。

まだ不況続きで、会社員の月給やボーナスが減ったり、不本意な異動が増えたりしているという。どうも、会社員にとって、環境とは与えられるものであり、愚痴の対象でしかないようだ。たしかに、周りを見渡せば、売上減と利益減を不況と金融危機のせいにするだけで、自らは無策な営業マンたちがたくさんいる。

バイヤーだって同じことだ。不況になって住宅ローンの支払いが滞りそうだとか、娯楽費を削減せざるをえないとか。仕事上で、お金の支払いのプロフェッショナルだったはずの職業人たちが、私生活のことになると陥穽に落ちている。

だから、そのなかで、どのように工夫しているのか教えてほしい。環境とは、本来は創りあげるものであるはずが、どうも所与のものになっているらしい。ただ、このまま論を続けることは私の趣味ではない。もちろん、汲々としているバイヤーたちもいるだろうが、努力してもどうにもならない状況もあるのだろう。

そこで、冒頭のフレーズに戻る。

「愛のない仕事のほうが、仕事のない愛よりマシだ」

多くの人のモチベーションが下がっている時代だという。これまで、愛をもち続けていた対象(=仕事)も、年収減というリアルの前には、そのような建前など吹っ飛んでしまったのだろう。

しかし、である。

それほどまでに、仕事に愛やモチベーションなどは必要だろうか、と思うのだ。このことを私は繰り返し言ってきた。モチベーションや愛などなくても、淡々と粛々と物事をこなすことこそ、ほんとうのプロに第一に求められるものではないか。

愛とは、自分の思い込みにより対象を純化させる尊いプロセスのことである。思いを包摂することによって、対象を、ほんとうの価値以上に信じ込むことをいう。それは決して悪いことではない。むしろ、その意味での「思い込み」は人間にとって必要不可欠ともいえるのだろう。

しかし、その思い込みが強すぎるがゆえに、人はときに大きく失望する。これまで信じていた会社、これまで信じていた組織が、ちょっとでも方向を変えると、裏切られたような気がするのだろう。ただ、それでも仕事はあるのである。愛がなくなったとしても、仕事はある。私はこの仕事というものそれ自体を愉しまずにはいられないのである。

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坂口 孝則

未来調達研究所株式会社 取締役

大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。

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