プロダクトアウトからマーケットインへ、製品主導から顧客主導へ、企業戦略変革の重要性が叫ばれて久しい。データベースマーケティングやCRM、ワントゥワンマーケティングなど、新たなマーケティング手法が次々に登場し、実践されている。そうしたなか、顧客との新たな関係づくりとして登場したコンセプトがCEM(Customer Engagement Management)だ。そして実践のベストプラクティス企業がザッポスだ。
新しい潮流CEM(カスタマーエンゲージメント・マネジメント)
こう書くと、「また、学者やコンサル会社、IT会社が根本は変わらないのに言葉だけ変えて、新たなコンサルやITインフラを売り込もうとしているに違いない!!」と思われがちになる。
顧客主導を推し進めるといった根本は変わらないが、筆者の認識では、顧客とのコミュニケーション環境が劇的に変化したために今までの発想では通用しないというパラダイムシフトが起こっている点である。これをまとめて表現しているのがCEMと考えるべきである。
それではどんなパラダイムシフトだろうか。その背景はソーシャルメディアの登場に起因する。
インターネットの登場により、顧客と企業はダイレクトにコミュニケーションする機会が増えた。それは顧客にとっては企業に対して直接モノ申すルートができ、逆に企業は直接かつ双方向で顧客のニーズに合ったコミュニケーションが可能となった。企業は顧客の情報を収集して分析し、100万人の顧客に100万通りのコミュニケーションをすることが重要な施策となったのだ。
これが、ソーシャルメディアの登場でパラダイムシフトが起こっている。ソーシャルメディアの浸透により顧客と企業の会話は全て公開情報になった。それまでは企業と顧客は1対1、つまりワントゥワンマーケティングであったものが、ワントゥワンの会話を周りの多くの顧客が見ているという状態だ。そしてさらに重要なことは顧客同士の会話が企業や商品を評価する大きな要因となってきたことだ。企業から発せられるメッセージよりも友達通しの共感のコミュニケーションの方が企業や商品の選択への影響を及ぼしてきているという状況である。
こうしたネットワークの中では、企業は100万人の顧客に100万通りのコミュニケーションをとることより、100人の生活者に正直に誠実にコミュニケーションをとり「絆」すなわちエンゲージメントを築きあげていくことが重要になってくる。これがCEMの考えである。
こうなるとCEM時代においてコールセンターの役割が違ってくるであろう。今までは効率化の名のもとに顧客との会話をいかにネットにシフトするかが重要施策であったが、電話での生活者との会話をチャンスと位置づけエンゲージメントを築き上げる重要なセクションに進化していくのではないだろうか。
CEMを実現のベストプラクティス ザッポスの奇跡
上記のCEMを確立してお手本となるのが、米国ザッポス社だ。
ザッポスについてのは、書籍やセミナー資料が多数存在する。早くも「伝説」となりつつある企業だ。その強さの秘訣は、「企業ビジョンからインフラ(事業運営の仕組み)までが一気通貫している」ところといえよう。
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