顧客経験価値あるいは、カスタマーエクスペリエンスという用語が最近頻繁に使われるようになった。総論は正しいが、「顧客価値」と「顧客経験価値」は何が違うのか?顧客満足度は「顧客価値」と「顧客経験価値」はどう違うのか? 「顧客経験価値の向上」と「企業収益の拡大」の因果関係は? そのような疑問を論理的に解説する。
■顧客経験価値/カスタマーエクスペリエンスのちまたでの定義
ネット検索により、顧客経験価値あるいはカスタマーエクスペリエンスを検索してみた。代表的な定義として以下のような結果が得られた。
①購入や使用過程における経験から得られる価値(分析系ITベンダー)
②製品・サービスを購買、利用する際の一連のプロセスにおける顧客の経験価値(データベースベンダー)
③商品・サービスの価値の中で、品質や機能といった直接的なものでなく、購入前や使用時に顧客が経験する気分や雰囲気、香りといった感覚的で付加的な価値のこと。(ITビジネス系雑誌の経営用語集)
④「顧客経験価値」とは「機能や性能という物理的な価値でなく、商品やサービスを購入または利用する過程(経験)で得られる「感情的な価値」(コンサルティング会社機関誌)
⑤カスタマーエキスペリエンスマネジメントとは「顧客と、製品や企業との関係全体を戦略的にマネジメントするプロセス」 米コロンビア大学ビジネススクール教授、バーンド・H・シュミット氏
上記から判断するに、商品やサービスそのものより、購入や使用時における価値が経験価値と定義しているようだ。しかしながら特に①、②は「経験」の有無による違いがいまいち明確でない。
③、④に関しては、「経験」の有無からくる価値の違いを表現していて分かり易い。
⑤はアバウト過ぎて、当たり前の感じを受けてしまう。
本解説では、上記③、④を意識しながら顧客価値に関して論理的に解説していく。定義に関しては後程あらためて定義をしていく。
■ネットプロモータースコア
「顧客経験価値」の定義にたどりつく前に、もう少し上位の企業の経営レベルの話から入っていくことにしよう。
企業が安定的に収益を確保するための戦略は様々な視点があるが、その重要な視点で「顧客戦略」というカテゴリがある。自社の潜在顧客、顕在個客をセグメンテーションして各セグメンテーションごとにどう対応していくか、あるいはどの顧客に絞っていくか増やしていくか等、顧客を戦略の中心に据えて立案していく。
その「顧客戦略」の中でも、ロイヤリティの高い優良顧客を数多く獲得する、あるいは育成してくという王道の考え方は万人納得いくとこどであろう。
この考え方を顧客満足度調査と連動してシンプルかつ最強の指標としてフレームワーク化されているのが「ネットプロモータースコア(以下NPSの記載)」だ。ザッポスやサウスウェスト航空、アメックス等、顧客志向で有名な企業が採用している指標だ。
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